複雑・ファジー小説
- Re: 【旅立ち編】ウェルリア王国物語〜眠れる華と紅い宝石〜 ( No.39 )
- 日時: 2013/09/24 10:18
- 名前: 明鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: DboXPOuE)
■CHAPTER18■ 研究員の見解-A soldier's purpose-
「……やっぱり、おかしいです」
順調に旅路を行脚していた一行は、イズミの言葉に思わず立ち止まった。
キリが言う。
「おかしいって、何が?」
「考えてもみて下さい」
「はへ?」
間の抜けた声を出すキリ。
腕を組んで必死で考える素振りをみせ、すぐにホールドアップする。
「イズミさあ〜ん。分かりませーん」
嘆くキリの隣で、アスカが言う。
「コイツは無視して良いから。イズミ、続けろ」
「いやあ……アスカ王子がお城から抜け出してきたのって、昨日ですよね」
「そうだ」
「だとしたら、余計におかしいです」
そう言って、イズミは一人唸る。
アスカは顔を顰めると、意味が分からないとぼやいた。
「話の流れが良く分からないんだが」
「つまりです。アスカ王子がお城を脱出したということは、お城側の警備に不備があったということ。当然、城側はその後、お城の警備を強化したはずです」
言いながら、イズミは道端にあった木陰に移動していた。そのあとを追って、同じように木陰に入るキリとアスカ、そしてユメノ。
木の幹にもたれかかりながら、イズミは発言を続ける。
「中から簡単に出れたということは、外からも簡単に侵入出来るということ。今は反勢力がウェルリア国王様を脅かしている状況です。当然、クーデターを恐れて、城側は警備を怠ってはいられない」
「そう、だな」
「しかし、です。そのあと、あろうことか、ユメノ様まで脱出することができた」
「それのどこがおかしいの?」
すかさずキリが口を挟む。
それに乗っかるように、ユメノ自身も発言する。
「そうだ。ユメノはイズミしゃんに呼ばれて、必死の想いで兄上たちに会いにきたのだぞ」
その言葉にイズミはゆっくりと頷いた。
「確かに。ユメノ様は優秀でございます。けれど、です。いくら優秀な子どもでも、相手は大人。しかも過酷な訓練を受けた、一国の兵士たちです」
「オレが逃げ出したあと警備が強化された城を、6歳のユメノが逃げ出すのは、実質上、不可能に近いということか」
「さすがアスカ王子。その通りです。ユメノ様が逃げてこれたのは、もしかすると城側の策略か何かかと思いまして。ね」
そこまで言い切って、うーんと腕を組むイズミ。
そんなイズミに対して、
「違うぞ。ユメノが凄いってことだ」
ユメノはなおも胸を張って答える。
イズミは困った顔に笑みを浮かべると、
「ええ。ユメノ様はとても優秀です」
穏やかなトーンでそう答えた。
満足げに笑顔を浮かべるユメノ。
アスカはイズミの本心を問い正したい衝動に駆られた。
「え、とゆーことはあ」
いつの間に取り出したのか、特大のぺろぺろキャンディーを手に、キリが声を上げる。
「お城の人達がユメノちゃんをわざと逃がした、ってこと?」
キリの発言に、アスカが驚いた表情を浮かべた。
「お前、……たまには、冴えた発言するんだな」
「どおゆう意味よう」
思いっきり頬を膨らませる。
キリとアスカのやり取りを見聞きし、あはははと軽やかに笑ったイズミは、「そうですね」と同意した。
「つまり、そういうことです」
「え、私が馬鹿ってこと?!」
「…………違います」
ボケをかましたキリを笑顔で振り切るイズミに、アスカは感嘆の声を上げたのであった。
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