複雑・ファジー小説
- Re: 【旅立ち編】ウェルリア王国物語〜眠れる華と紅い宝石〜 ( No.40 )
- 日時: 2013/07/21 08:49
- 名前: 明鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: .p4LCfuQ)
■CHAPTER19■ 潜入、ウェルリア城-Go to a house!-
キリたちは、様々な不安や期待を抱きながら、城を目指してひたすら歩き続けていた。とにかく、ひたすら。
歩いて。歩いて。歩いて。
時折休憩しつつ。
歩いて。歩いて。歩いて。歩いて。
とにかく、歩き続けていた。
必死になって城を目指す理由はただ一つだ。
——ウェルリア兵に奪われてしまったリィさんの【小箱】を取り戻すため!
だが——。
キリたちが【小箱】を持っていると思い込んでいる兵士たちも、実は、反政府軍と思しき人物たちに【小箱】を奪われているのだった。
しかし、そんなことはつゆ知らず。
様々なリスクを抱えつつも、城を目指すキリたちであった。
進むにつれて、辺りは段々と鬱蒼とした林へ変わっていった。
この奥に本当に城があるのだろうか。
不安になりながらもあとを追っていたキリは、それでも力を振り絞って林道を歩き続けたのだった。
——と、突然、視界が開けた。
「そんなこんなで、着いたぞ。あれがウェルリア城であるっ!」
先陣を切って歩いていたユメノが、びしっと指さした方向には、大きな湖の中心に浮かぶように建っているウェルリア城の姿があった。
二つの塔がそびえるウェルリア城は、おとぎ話にでも出てきそうな古風なデザインの城だ。
キリは思わず、はああと心の底から息を吐きだし、その大きさに圧倒されていた。
しかし、その城に潜入するには、目の前に広がる湖を渡らなければならない。
「ね、ここからどうやってお城に入り込むの?」
キリの疑問は最も。
目の前には湖が広がっている。
まさか、泳いで渡る訳には行かない。
近くに渡し船と思しきものも見当たらず。まさか、ウェルリア城から迎えを呼ぶ訳にも行かず……。
と、ここでアスカが一つ提案を出した。
「ここの湖は日に二回満ち干きする。朝と夜の二回だ。その時、城への道が開ける。だから、今夜の引き潮のタイミングで、歩いて城へ向かうことにしよう」
その意見に同意した一行は、近くの林に身を隠しながら潮が引くのを待つことに決めた。
——そのつもりだったのだが。
「待ってたわよ、イズミ」
勝ち誇ったような、澄ました女性の声が背後で聞こえた。
キリたち一行が声のした方向を向くと、そこには、軍服に身を包んだ五人のウェルリア兵たちが悠然と構えていた。
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