複雑・ファジー小説
- Re: 【企画】コワレモノショウコウグン【アンソロ始動】 ( No.15 )
- 日時: 2013/10/14 06:22
- 名前: たろす@ ◆kAcZqygfUg (ID: smnt7Sg1)
【アンソロジー企画表題:Act Cadenza】
綺麗な色、綺麗な言葉。
滑らかな質感、泡沫。
優しい言葉は、いつもそう。 曖昧で、軽快、そうしてすぐに綻ぶの。
崩れ去る時も軽快で、嗚呼、またこうして私は一人になるのねと、心の中で反芻、だけれども、それもつかの間。
私の中で、優しい気持ち、悲しい気持ち、どう名づければ言いのか分からない気持ち。 溢れ出して、混沌と。
恐ろしいほどの速さで、感情は入れ替わる。 崩れ去りながら、また、生まれる。
延々とこの胸を啄んで、終わりの無い苦痛の渦がこの胸には在るの。
私を包む建前の感情の中、この醜い想いを抱えて、私は今日も生きる。
だけれども、私はこの醜い感情が、どうしても嫌いになれないの。 誰もが持つ、いたいけな醜さ。
さあ延々と歌いましょう、この醜い感情を。
さあ延々と奏でましょう、この悲壮な想いを。
さあ綴りましょう、貴方の、その内側に隠した、コワレモノを。
ゆるり巡る一日は、昨日の延長線、繰り返すばかり。
なのにどうして私たちは、毎日同じように何かを感じられるの?
それはきっと慣れてしまう脆さを知っていた私たちが、今日を愛するために選んだこと。
それはきっと期待しなくなってしまった私たちが、明日を夢見るために選んだこと。
例えば繰り返し来る今日を感じて、明日を予想するとしたら?
歪んだピントに狂う心、嗚呼、滑稽。
意地汚い私たちは、どんなことも貪欲に搾取するの。
そんな私たちが生きた今日には、いったい何が残るの?
明日に芽生える種を孕むには、枯れすぎてしまう。
だからきっと私たちは、毎日繰り返す日常に、繰り返し感情で答えるの。
醜い私たちが出来る、私たちへの手向け。
どうせどれも同じ様に醜いばかりの心なら、もう何もかも語りつくしたようなもの。
だからほら、臆さずに描きましょう?
建前で飾り付けた安物のスーツを脱いで、汚れ物同士腕を回して、そうしてどんどん堕ちていくの。
罪悪の素晴しさを語って、今日を愛せなかったことを嘆いて、また新しい今日へ帰りましょう?
そうしてほら、本当の自分、コワレモノを吐き出した貴方は、この新しい今日に目を覚まして、きっと明日が来て欲しいと言うわ。
本当は他の誰のようにもなりたくないから。
そうして新しい今日を感じて、貴方は明日に願いを掛けるわ。 自分自身でさえ居たくは無いと。
そうして抱きしめるわ。 貴方自身が吐き出した、その醜いコワレモノを。
* * * *
cadenza(カデンツァ):伴奏を伴わない即興で弾く 素晴しいソロ。 楽章の締め、見せ場。
アンソロジー企画に参加いただいた全ての方々に捧ぐ。