複雑・ファジー小説
- 【クリスマス短編】コワレモノショウコウグン【R-18】 ( No.23 )
- 日時: 2013/12/25 08:03
- 名前: たろす@ ◆kAcZqygfUg (ID: A53dvSWh)
- 参照: http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=big&illust_id=40477742
【頭骨と百合のお砂糖漬け-哀願S女と冷笑M嬢の快楽と思われる賛歌の断片-】
「ねぇ、愛している? 私を愛しているの?」
ふふふ、と薄い笑みを湛える彼女の口元はそんな言葉を紡ぐけれど、冷泉を湛えた様な鋭い瞳は容赦なく私の裸体を突き刺す。
勿論私は彼女を愛しているし、そう伝えたいけれど、喉の奥までゴワついた布切れを詰め込まれている身にはそれさえ叶わない。
必死に呻いてはみるが、彼女は心底どうでも良さそうに「ふうん」と零す。 いつものように。
そうしてその冷たい笑みの張り付いた口角を持ち上げて、手にしたカッタ—ナイフを私の目の前で静かに振る。
「貴女の、その綺麗な指先が気に入らないわ」
そう言いながら、鎖で繋がれた、とても綺麗とはいえない私の指を撫でる。
私のよりも遥かに美しい、細く骨ばっているけれども、繊細な透明感のある指が、私の指に絡みつく。
その彼女の美しい指が握る血に錆びたカッターナイフ。 相反する様な醜と美の結晶が、私の指先をざくりと切り裂いた。
悲鳴を上げようにも、喉の奥まで入り込んだ布はそれさえ許さない。
それを嘲笑う様に、彼女は冷たい笑みのまま、私の指先を一本一本切りつけて、十字の痕を付ける事を楽しんだ。
でも、彼女はそれを堪能した後、私を解放してから必ず自分の傷つけた箇所を優しく手当てしてくれる。
血の止まらない指先にガーゼを宛がって、アラベスクの様に滲む血にうっとりと眼を溶かしながら、彼女は必ず問いかける。
「私を、愛しているの?」
そんな彼女に、自由になった唇を重ねる事で私は答えるけれど、どうしてだか、いつも喪失感を感じるの。
「愛しています、ご主人様」
舌を絡めて、彼女の歯の裏へ舌を這わせる様にして、そうして彼女の甘い口腔の香りを含んだ、舌に絡んだ唾液が糸を引く程に愛し合っても、何故だか空疎な出鱈目を浴びせた様な罪悪感に苛まれる。
そうして気付く。
嗚呼、私は彼女を愛しているけれど、その愛を正しく伝えた事がないんだ。
彼女を愛しているけれど、彼女は私に愛された事が無いんだ。
だから、今度は寄生木の下で、彼女に私の醜い愛を感じてもらおう。 そう、私は心に誓った。
* * * *
「こんな事をして、後で覚えていなさいな」
悔しさを滲ませる彼女の声に、私は自然と笑みを零した。 嗚呼、愉しんでくれているのね。
彼女の艶やかな長い黒髪の奥に光る眼光が、普段の冷たいものでない事は残念だけれど、今日はそれで良いの。 今日だけは。
彼女が楽しんでくれている事が嬉しくて、私は手にした鞭、家に有る物の中でも特にお気に入りの動物調教用の長い鞭を振るった。
黒く輝く残光が舞って、一寸遅れて甲高い音が部屋に響く。 その後を、彼女の悲鳴が追った。
いつもの澄ました冷たい声とは違って、彼女の悲鳴も鋭い高さを持ち合わせている。 私だけが知る彼女の声、とても幸せ。
彼女らしい白と黒の華美なワンピースが無残に裂けて、その下の白い肌も朱を弾かせている。
そこらの大人のオモチャとは訳が違うの。 ホンモノは、悦いでしょう?
そんな事を思う目の前で、彼女は綺麗に並んだ小さな歯でその薄い唇を噛み切った。 屈辱的なのね、とても。
「もう、鞭はお止めになりますか、ご主人様?」
普段は私が磔にされている、私の血が染み込んだ木の磔台へ拘束された彼女にそう問いかけて、私はそっと彼女の唇へ唇を重ねる。
鋭い痛みと共に、ぶつんと軽い音が鳴ったかと思うと、私の唇は思い切り食い破られていた。
だけれど、彼女が元気なのはとても嬉しい。 だって、まだまだ愉しめそうなのだもの。
私はバタバタと血の流れ落ちる唇へ僅かに触れてから、彼女の頬を思い切りはたいた。 彼女の唇から、淡い鮮血が飛ぶ。
痛みよりも驚きで固まった彼女へ微笑んで、私は彼女の額に血で濡れた唇で口付ける。
「これ、やりましょうか?」
ふと私は思いついて、彼女に問いかけながら部屋の隅の棚へ手を伸ばす。
古今東西、あらゆる拷問器具——その殆どは殺傷力がありすぎて使った事の無い物ばかりだが、が並ぶ棚から、大量の細い札と一本のナイフが入った瓶を手に取る。
彼女の顔からさっと血が引いた。
「駄目、それは駄目」
急速に勢いを失った彼女の声が微笑ましくて、私の口は自然に笑みを作る。 その表情に危険を感じたのか、彼女は僅かな余裕しかない磔台で手足をばたつかせた。
暴れれば暴れるだけ枷が皮膚を破る。 それを彼女は良く知っているはずなのに、その枷から逃げられるはずもない事も知っているはずなのに、必死に逃げだそうとする彼女が堪らなく愛おしい。
「さっきまでの威勢はどこへ行ってしまったんですかご主人様? 普段の貴女は、もっと凛然としていらっしゃるでしょう?」
ふふふ、と零して、私は瓶に入った札を一枚引いた。 札には『親指』と書かれたいた。
私はその札を彼女に見せて、彼女の表情が引きつるのを眺めて、瓶からナイフを引き抜く。
小ぶりな、だけれど刀身が波打った、美しい装飾のナイフ。 これは彼女の美しい手が握れば芸術品なのだけれど、私が握っても、何も感じない。
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つづく。
- 【クリスマス短編】コワレモノショウコウグン【R-18】 ( No.24 )
- 日時: 2013/12/24 21:37
- 名前: たろす@ ◆kAcZqygfUg (ID: PJ6eXMON)
- 参照: http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode
続き。
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「このナイフ、クリスダガ—と呼ぶんですってね。 動かないでくださいね、他の指まで切ってしまいますから」
ガタガタと震える彼女が愛おしくて、私は優しく声を掛ける。 そうして、その良く切れるナイフで、彼女の親指の肉を抉った。
やっぱり彼女の指は骨ばっていて、ナイフが骨にぶつかるのがわかる。
彼女の絶叫が空気を劈く。 暴れるせいで、彼女の親指は骨ごと半分ぐらいの太さになってしまった。
同じように何枚か引いて、彼女の耳や胸、太腿何かを抉った頃、私は彼女の傷の止血をした。
拷問器具の並ぶ棚から血に汚れた包帯を取って、適当に止血をする。 いつもはされる側だから、止血の仕方が良く分からない。
そうして、次で最後、と思って引いた札に、彼女が叫んだ。
「お願い、それは駄目! そこは止めて、本当に、お願い!」
彼女の疲れ切った声が、精一杯言葉を振りしぼる。 だけれど、引いてしまった札は戻せない、それが決まりなの。
その札には『右目』と書かれていた。 私は、自分の右目に当てられた眼帯を、ゆっくりと外す。
「ご主人様とお揃いになれるなんて、幸せです」
眼帯の下にぽっかりと空いた空洞を凝視して、彼女は息を飲む。 彼女自身が抉り取った私の右目。
その時の私の狂わんばかりの絶叫を思い出したのか、彼女の赤く彩られた脚を多量の水分が伝った。
僅かな刺激臭が鼻孔を刺激する。
その光景があまりにも甘美で、私は血流が熱を帯びるのを感じた。 それらは直ぐに確かな高揚になり、欲望を帯びた水分となって秘所を濡らす。
背徳的な絶頂さえ感じて、私はナイフを握り直した。
「じゃあ、いきますよ。 動かないでくださいね」
そう言って、私は彼女が暴れ出すよりも早く彼女の右目にナイフを突き立てた。
人間はこんな声が出せるのか、と思う様な絶叫が上がって、彼女が咽返る。 叫びすぎて喉が切れたらしい彼女は酷く色の薄い血を吐いた。
あまり暴れられて脳までナイフが刺さるといけないので、私は慌ててナイフを引き抜く。 刃先に、目玉が付いてきた。
嗚呼、彼女の、ご主人様の目玉だ。 そう思うと、私は考えるよりも早くその目玉を口に含んでいた。
鉄の味ばかりで、中の水分がどろりと舌の上で広がる。 すぐに嚥下するのは勿体ないから、もう少し堪能してからにしよう。
「この眼帯、お貸ししておきますね」
私は新しいおもちゃを手に入れた子供の様に口の中で目玉の残骸を転がしながら、外した自分の眼帯でそっと彼女の血を流す右目を覆う。
私の手が近づくと、彼女はガタガタと歯の根も合わないほどに震えて、足元の水たまりが大きくなった。
「あらあら、はしたないですよ。 蓋、しておきましょうか?」
私は問いかけながら彼女のスカートをナイフで切り開いて、羞恥的な水分に濡れる彼女の秘所へ顔を埋めた。
鼻孔を刺激する刺激臭は、舌にもじんわりと刺激的で、それがまた愛おしくて、私は夢中で舌を這わせた。
彼女の花菱はすぐに私の唾液と甘露に濡れて、私の脳内を溶かしていく。 嗚呼、やっぱり愉しんでくれてるのね。
充分に彼女のそれが粘度を含んだ事を確認して、私は再び隅の棚へと向かった。
「嗚呼、お願い、もう止めて」
力無く哀願する彼女の声を背後に聞いて、私は目的の物を手に取った。
銀色の、掌の上に乗り切るような大きさの物体。 綺麗な彫刻の彫られた、洋梨の様な形の拷問具。
それを彼女に見せて、私はいつも彼女がやる様に、冷たい笑みを彼女へ贈った。
「私もまだ使ったことは有りませんけど、きっととても悦いと思いますよ」
そんな事を他人ごとの様に言って、私はそれが正しく動くか確認した。 美しい芸術品は、キリキリと僅かな音を立てて、問題無く動いた。
彼女はもう暴れる気力も体力も残っていないのか、僅かに嗚呼、と零す。
そんな彼女に唇に血の乾いた唇を重ねて、私はそっとその銀色の洋梨を彼女の秘所に宛がった。
「嗚呼、無理よ、そんなの入らない!」
最後の気力を振り絞って紡がれた彼女の声を唇で塞いで、私はゆっくりと手に力を込めた。
まだ男を受け入れた事のない彼女の聖域を、銀色の洋梨が侵す。
彼女の悲鳴が切れ切れに上がって、その度に彼女の秘所は洋梨を押し戻すように伸縮した。 とても妖艶で、欲情を煽る動き。
私はいつの間にか自分の脚の間へ空いた手を伸ばしている事に気付いたけれど、もう自制は効かなかった。
彼女の脚を伝う破瓜の鮮血を舐め取って、私は快楽へ堕ちる。 落下する様な急速な絶頂を感じる瞬間に、思い切り彼女へ洋梨を押し込む。
絶頂の悲鳴と、彼女の悲鳴が重なった事が、私はとても嬉しかった。
そうして僅かに顔をのぞかせるヘタの部分へ指を絡ませて、私はいつの間にか折っていた膝を伸ばす。
「とても、とてもとても愛しています、ご主人様」
そう言いながら彼女に口付けて、私はそのヘタを回した。 彼女の中で、朝顔の様に洋梨が開く。
ゆっくりと、執拗に、もう既に許容できる大きさを遥かに超えた彼女の秘所を押し広げていく。
彼女は打ち上げられた魚の様に、僅かな空気を求める様に切れ切れの悲鳴を上ていた。 もう、反抗する余裕もないらしいのは少し残念。
私は再び背徳的な絶頂が近い事を知った。 嗚呼、なら、一緒に。
そう思って、私は彼女の咥えこんだ洋梨のヘタを、思い切り回す。 美しい機械仕掛けは僅かな停滞も見せず、彼女の聖域をズタズタに引き裂いて、もう一度彼女の絶叫を響かせた。
私は、今までにない大きな絶頂の波に飲まれて、私の視界は白く塗りつぶされた。
* * * *
どれほどの時間、床で果てて居たかはわからない。
だけれど、私が目覚めた時、彼女は寄生木の下に設えられた磔台で息絶えていた。 無残に引き裂かれた秘所から滴る鮮血が、その下の血だまりに落ちて虚しい音を奏でる。
私が、愛すべき小さな死を迎える時、彼女が紛う事無き死の淵へ堕ちていった。 それだけで、私は満足。
私は力無い彼女の華奢な体を丁寧に解放して、お風呂場で綺麗に汚れを洗い流した。
元の形にして彼女の中から取り出した洋梨も、綺麗に洗った。
洗い流して、もう一度開いてみると、洋梨よりも百合に似ている気がする。 そうだ、百合の花の、お砂糖漬けを作ろう。
思い至った私は寝室の花瓶から乙女百合を引き抜いて、手頃な瓶にお砂糖とお水と一緒に詰め込んだ。
だけれども百合の花はすぐに浮かんできてしまう。
私はもう少し大きな瓶を用意して、中身を移して、何か重石になる物を探した。
そうして完成したお砂糖漬けの瓶、乙女百合と角砂糖と、金平糖と、それから頭骨の沈んだ美しい瓶。
それを眺める度に私を苛む空虚な喪失感。 戒めの様にふと痛む、無くなった右目。 その全てが、私たちの愛し合った証。
痛みも、孤独も、貴女の与える全てが、私の幸せ。
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Fin.