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複雑・ファジー小説
- Re: 神様のジオラマ / 題名変えた ( No.24 )
- 日時: 2014/03/16 17:15
- 名前: あまだれ ◆7iyjK8Ih4Y (ID: 06An37Wh)
*
建物の中に気を失ったイツキを寝かせ、俺と金堂は御影の下を訪ねた。
音無の病気のこと。イツキの目のこと。聞きたいことは他にもたくさんあったが、それについては取り合ってはくれないだろう。
「いらっしゃい」
カップのコーヒーを片手に扉を開いた御影は、微笑みを貼り付けて続けた。
「見えない少女のご相談?」
隣で唾を飲み込む音が聞こえた。俺は動じない素振りで肯定する。
案内された、初めに訪れた時と同じ部屋にはコーヒーカップが二つ用意されていた。待ってましたとばかりに湯気をうねらせて。
「あれは病気なんかじゃないよ。誰かの悪意の塊……そんな感じだね」
無駄な装飾は一切せず、彼は本題を切り出した。
「悪意?」
「そう。コイだよ」
故意。彼女には誰かに恨まれる部分があったろうか。
暗い木のテーブルに目を落とし、思い当たる節を探すが見当たらない。口をつける気のしないコーヒーは湯気を出すのを止めていた。
「犯人捜しだ。僕に言えるのはこれくらいかな」
「犯人つったってよ、世間は広いんだぞ」
「そんなことはないさ」
カップをを空にして机の上に置き、彼は嘲笑うように微笑んだ。
「世間なんてせいぜい、箱庭くらいの大きさだよ」
御影は見掛けに寄らず多忙なのだそうで、労いの言葉を残して部屋を去った。冷めたコーヒーを飲み干して、俺と金堂も席を立つ。
謎は解けないまま後味は悪かったが、彼のコーヒーは美味かった。
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