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複雑・ファジー小説
- Re: 神様とジオラマ ( No.64 )
- 日時: 2014/09/15 01:38
- 名前: あまだれ ◆7iyjK8Ih4Y (ID: wSPra7vb)
◆
「世界は終わらない。終わらせない。やっと作ったんだ。幸せな世界だ」
自分でも笑ってしまうくらいに、力のない声だった。自分が音無のためにやってきたことは、正しかったはずなんだ。
「聞いて」
目の前の少女は、強い目で俺を見ている。
「偽物の幸せだって、音無は言った。この世界は神様の、君の自己満足だ。……もう、やめよう」
やめてくれ。やめてくれ。
「やめよう。露木だって、本当は分かってる」
夕月は一度息を吐き、そしてもう一度大きく吸った。
「『この世界が偽物だとしても、私は嬉しかった。露木くんの優しさが、嬉しかった。だからこそ、もういいの。……ねえ、思い出して。辛い世界だったから、汚れた世界だったから、不幸な世界だったから、私は露木くんを好きになれたんだよ』」
音無の声が、夕月の声に重なっていた。
「…………は」
なんだか力が抜けてしまって。
「はは……俺は二度、間違ったのか。俺は……。俺が、自分自身がこの世界に対する未練でできた存在だった」
俺は夕月に告げた。
「終わらせてくれ」
彼女はうなづいて、目を閉じた。
俺も、目を閉じる。
目の裏の音無はいつまでも、嬉しそうに笑っていた。
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