複雑・ファジー小説

Re: 鬼世姫〜KISEHIME〜 第二話更新 ( No.20 )
日時: 2014/05/19 13:50
名前: 結縁 ◆hj52W3ifAU (ID: wPqA5UAJ)

第三話【憂葉の意思】

 お風呂を借りた私は血塗れた私服を脱ぎ、シャワーを浴びた。お風呂場は和風な造りだったが、シャワーもついていればお湯もでる。それだけのことなのにホッとした。
 髪と体の細部までしっかりと洗い浴びてしまった血を流す。
 だけど、どんなに力強く洗おうとも恐ろしい記憶は消えず、自身の姿も化け物のままだと分かっていた。

「……どう、して……」

 暫くそうしていて、やがて意識せずとも涙が溢れた。
 とても幸せだった誕生日。家族がいて穏やかにだけど平凡に過ぎるはずだった一日。
 後悔したって時間は戻せないし元には戻らない。
そんなことは分かってる。分かってる……けど、自分のしたことが、家族の泣き叫ぶ姿が、どうしても脳裏に焼き付いて消えなかった。

「何で、私なの…? なんで…っ…!」

 一度緩んでしまった涙腺からは止めどなく涙が溢れて頬を伝った。
 私に泣く資格なんてないのに、醜い化け物なのに、どうして……。

「私、自分が怖いよっ……」

 シャワーのお湯を浴びながら暫くの間、涙が枯れるまで泣き続けた。

◆ ◆ ◆

 どれくらいの時間そうして泣いただろう。
 自分でも分からなくなるくらいまで泣き続けてた。

「私は……これからどう生きればいいの…?」

 シャワーを止めて自分自身に問いかける。
 そうして、先程よりも少しだけ冷静さを取り戻した私は彼等ーー六鬼に教えてもらった知識を思い出すことにした。

◆ ◆ ◆

 彼等は一つ一つ教えてくれた。

 一に彼等は鬼族という一族の生き残りで人でないもの。鬼なのだと。
 この場にいる六人はその鬼族の中でも力に強い六鬼というんだと。

 二に此処は鬼王村と言う山奥にある村で生き残った鬼族が隠れ住んでいる場所だと。

 三に私は150年に一度選ばれる鬼世姫という鬼族でもっとも生命力に長け、力ある鬼だと教えてくれた。
 何故、私が鬼として目覚めたのかは誰も分からないらしい。だけど、鬼世姫に選ばれた私は決めないとならないことがあった。
 それはーー六鬼の中から一人婿を選び契りを交わし子を成すという役目だった。

 きっと、こんな状況になければ断ったし拒否したと思う。
 でも、今の私にそんな権利はないし……何よりもう帰る場所すらない。

 だから、決めたの鬼として生きる自信なんて無いし、何をするか分からない自分が怖いけれど、必要とされるなら生きてみようと。
 私が犯してまった罪を少しでも償えるなら、体だって捧げようと。

「私……もう少しだけ頑張ってみるから……」

 だからお母さん、お父さん、それから……舞葉、安らかに眠ってね。

 そんな思いを胸に、私は彼らの待つ部屋へと戻ることにした。