複雑・ファジー小説
- Re: 鬼世姫〜KISEHIME〜 第五話更新【コメ欲しいです】 ( No.35 )
- 日時: 2014/05/19 14:10
- 名前: 結縁 ◆hj52W3ifAU (ID: wPqA5UAJ)
第二章〜変貌する日々〜
第六話【鬼王村の歴史・前編】
色んな事が合った誕生日が終わり、翌日の朝。小さな窓から入り込んだ太陽の光で目が覚めた。
「ん……」
ゆっくり目を開けて、眩しさに目を覚ます。
目が慣れてくると、時間が気になり室内を見回す、けれど時計は見つからなくて。
仕方なく思い、外の空気を吸おうと部屋のドアに手を掛けたときだった。
私が開ける前にドアが開いたかと思うと、目の前には深緑の着物が……?
「何を突っ立っている……?」
ボーッと着物を見つめ、突っ立ったままでいると怪訝そうな声が頭上から聞こえてきた。
「あ……おはようございます」
そう言って、視線を上に向ければ、そこには想像通りに無表情な茨木さんが立っていた。
「……どうやら、眠れたようだな」
目が合うとぶっきらぼうに、だけど、ほんの少しだけ柔らかな表情でそう言われた。
「はい。茨木さんはあの後、眠れましたか?」
あの後すぐに私は眠ってしまったため、茨木さんがどうしていたかを知らなかった。だから気になったんだけど……。
「……俺のことはいい。それよりも行く場所がある、ついて来い」
「あ、待って下さいっ」
質問には答えず、代わりに行く場所があるという茨木さん。
歩きながら何処へ行くのか聞いてみたけれど、教えてもらえなくて、結局、何処か聞けないまま目的地についてしまった。
「あっ、姫ちゃんと茨木やっと来た!」
「随分と遅かったですね、茨木?」
「おや、我等が姫様は無事、茨木と過ごせたようだね?」
「……大蛇、朝っぱらから酒臭い。俺の前で飲むなとあれほど……」
「姫、おはようございます。昨夜はよく眠れましたか?」
目的地とは、大きな倉庫……蔵の前で、そこには昨日の六鬼の皆がいた。
「えっと……此処は…?」
どうにも、一度に声を掛けられるのに慣れない私は、一番気になったことを聞くことにした。
「うーんと、此処はねー、見ての通り蔵だよ!」
「久留乃、それは姫も流石に分かると思うのですが……」
「まぁ、此処は蔵だが、只の蔵じゃないってことだな」
「余計ややこしないかくなってないか?」
「はぁ……僕から説明しますよ。どうやら皆さんこういう役割は苦手なようなので」
笠間さんがそう言うと、皆が静かになった。それを確認してから笠間さんは、今日これからすることを説明してくれた。
「此処は鬼王村の歴史を保管する場所なんです。つまり、今日、姫君には鬼王村のことや鬼族のこと、それから自身のことである鬼世姫について知ってもらいます」
其処まで言うと笠間さんは蔵の扉の前で何か呪文のようなものを唱えた。
すると、ギギギィという独特な音と共に扉がゆっくりと開かれた。
「少々、埃臭いかもしれませんが、中は自由に見て大丈夫ですよ」
「えっと、失礼します」
笠間さんの言葉を筆頭に中へ進む私達。蔵の中は薄暗く、幾つかある窓からの明かりだけが頼りだった。
それにしても、凄く古そうな書から、綺麗なものまで、そんなに広くない蔵の中なのに沢山の書がギッシリと本棚に詰まっていた。
好きに見て良いとは言われたものの、正直迷ってしまっていると後ろから声を掛けられた。
「姫、何か気になる書はありましたか?」
振り返れば、九条さんがいた。
「迷ってしまって……どれを見たらいいのか…」
正直に話すと九条さんが、幾つかの書を選んでくれる。
それを手に取り、文面に目を向ける。だけど私に読める内容ではなかった。
読めない理由は……古いもののせいか達筆すぎて、書いてあることがよく分からなかったのだ。
それでも、せっかく勧めてもらったのだからと自力で読もうと奮闘していると、隣から笑い声が聞こえてきた。
「プッ……あ、すみません。姫の表情があまりにも面白かったもので……」
笑っていたのは、隣で同じように書を見ていた九条さん。
真剣に読もうとしてたから、笑われたのはショックだった、というか恥ずかしいというか。
そんな思いで俯いていると九条さんが言った。
「すみません。意地悪が過ぎましたね。……お詫びにわたくしが読んで差し上げますよ」
まだ笑みを含みつつも、九条さんは私の持っていた書を手に取り、一緒に読んで、私が理解できないところは説明しながら教えてくれた。
そうして、一時間くらいが過ぎた頃、久留乃君が私達を呼びに来た。
「二人ともー、そろそろお昼にするって!」
お昼と言われて、昨日の夜から何も食べていないことに気づいた。
気づいてしまえば、お腹は主張するかのように鳴った。
「っ///」
お腹が鳴ったのが恥ずかしくて、うずくまっていると、耳元でもっと恥ずかしいことを囁かれた。
「お腹の音まで可愛いなんて……姫はどこまで、わたくしを夢中にさせれば気が済むんですか?」
囁いたのは九条さんで、私が何か言い返す前に手を引かれ、皆の待つ方へと連れて行かれた。