複雑・ファジー小説

Re: 鬼世姫〜KISEHIME〜 第六話更新【コメ欲しいです】 ( No.38 )
日時: 2014/05/19 14:17
名前: 結縁 ◆hj52W3ifAU (ID: wPqA5UAJ)

第七話【鬼王村の歴史・中編】

 九条さんと共に皆の所へ戻ると、広い屋敷へと案内された。
 日本の屋敷と言う感じの和風な造りで、縁側に庭まであるこの場所は笠間さんの自宅なんだとか。
 驚く私に側にいた九条さんが教えてくれたのだ。

 笠間さんの案内で広間に案内され座布団へ座る。昼食を作ると言うことで手伝おうと思ったんだけど、やんわりと笠間さんに断られてしまった。
 そんなわけで広間には私の他に、黒宮さん、酒呑さん、茨木さん、久留乃君の五人が料理を待っていた。

「あー、お腹すいたなー。大蛇はよく飽きもせず酒ばかり飲んでるよね」
「酒あってこその俺だぞ。お前もそのうち酒のよさが分かるときがくるさ」
「……お前は飲み過ぎだと思うがな。少しは弁えたらどうだ?」
「何だよ、黒宮。そんな言葉を俺が聞くと思ってんのかぁ?」
「……言うだけ無駄だったか」

 そんな会話を繰り広げる三人から少し離れた位置で、黙々と本を読む茨木さん。

 この光景を見ていると、昨日初めて会ったはずなのに何だか懐かしく思えて……心が落ち着いた。

 待つ間に私も先程、九条さんに読んでもらった書の内容を思い返すことにする。
 意外と広かった蔵の中には沢山の書があって、その中には知りたかったことが詳細に書かれてた。

 まず、鬼族は人が生まれる何百年も前、古代から居たのだと。
 そして、人が生まれてからは恐れられ、殺されそうになったから身を隠すため鬼王村が作られた。
 鬼王村は鬼族にとっての拠り所になったが、平安時代、力ある人間に目を付けられ、一度は滅び掛けた。
 だけど、何とか人間達を追い払うことに成功して生き延びることができた。
 しかし犠牲は大きく、鬼族の半数以上が命を落とした。
 それからは地獄のようだった。村では子供に恵まれず、女鬼の数が激減した。
 そしてーー最終的にの残ったのは、女鬼の中でも一番力の強い鬼。
 そう、鬼世姫だった。彼女が生き延び、女鬼が生まれなければ、鬼族は滅んでいただろう。
 それからだった、鬼世姫の存在が特別なものになり、男鬼の中でも若く力ある六鬼から婿を選ぶようになったのは。

 と、そう言う内容だったと思う。

 他にも覚醒した鬼世姫の血は治癒の力があり、その心臓を食らえば不死になるとも書かれていたり、派等についての書もあった。
 後は、婿となった六鬼と真の意味で契りを交わし結ばれたなら、男鬼は力を。鬼世姫は飢えから解放されるらしい。

 うん、大体こんな内容だったはず。そこまで考えているといい匂いがして我に返った。

 匂いの正体は、お味噌汁とポテトサラダとご飯、それに漬け物に焼き魚を持った九条さんと笠間さんだった。
 どうやら、結構な時間を考えに没頭していたらしく、料理が出来上がったみたいだった。

「わー 美味しそう! ねぇ、早く食べようよ!」

 そう言った久留乃君の言葉を最初に、手を合わせて皆で昼食を頂いた。
 温かく優しい味の料理は心を満たして、生きているという実感を持たせてくれる気がした。