複雑・ファジー小説

Re: 鬼世姫〜KISEHIME〜 扉絵掲載!【不定期更新中】 ( No.59 )
日時: 2014/05/23 18:17
名前: 結縁 ◆hj52W3ifAU (ID: APISeyc9)

間幕

 憂葉が笠間の屋敷で一夜を過ごした夜、ある動きがあった。
 その動きは以前、憂葉が鬼世姫として目覚めた際に使用した小屋でのこと。
 
 小屋には、一人の血濡れた少女と男がいた。男は鬼族の一人で、血濡れた少女を運んだ張本人だ。
 血濡れた少女は息も絶え絶えで、生きているのが不思議なほどの瀕死の状態だった。

「おい、起きろ」
「……」

 男は横たわり動かない少女に呼びかけ、こう言った。

「生きたくはないか」

 そう問いかけ数十秒、少女の口が微かに動き、こう告げる。

「……生きたい」

 その言葉を聞き届けた男は、自分の指を切ると、血を数滴少女の口へ流し込んだ。

「かはっ」

 その途端、もがき苦しみ、血を吐く少女に男は言う。

「お前の命は助かる、が、最早人ではない」

 男が言い終わらないうちに少女の体に異変が起きる。髪は白く染まり、瞳は冷たく蒼いものに。そして鋭い牙と爪、二本の角が少女にはついていた。

「何、をした」

 苦しみに打ち勝ち生き延びた少女は、自身の姿を確認するまでもなく男に問う。

「お前を鬼にした」

 男は問いに淡々と答え、続けて言う。

「復讐、したいんだろう?」

 男が言った、一言で少女の目に暗い影が差す。だが、それは一瞬で、ニヤリと笑い少女は呟いた。

「今行くから、待っててねーーお姉ちゃん」