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複雑・ファジー小説
- Re: 紅玉の魔女と召え魔の翼 ( No.1 )
- 日時: 2013/07/30 15:51
- 名前: アルビ ◆kCyuLGo0Xs (ID: 6Ex1ut5r)
1.
「ラ・イ・トぉ〜!!!三秒以内に主のもとへ現れなさいっ!さもないt」
「お呼びでしょうか、アリス」
僕は音もなく僕の主、アリスの真後ろに着地して、いつもの少年の姿になった。
「ふむ、二秒だったわね。よろしい」
アリスは後ろから不意に返事をしたことにも全く動揺せず、そう評価した。
……僕も召え魔になって、慣れたものだ。
-*-*-*-
ここは『ドリアーネの森』。巨大な樹の魔物・ドリアーネが治める、広大な森だ。もちろん、魔物が治めているだけあって立派な《危険地帯》だ。
「どうかなさったんですか、アリス?」
僕が尋ねると、アリスはピッ、と黒い手袋で包んだ細い指で後ろを指した。
その指の先には、野生の魔物——狂いすぎて『動物』を"やめた"狼、ヒトガタをした植物、怪鳥その他etc…——が、アリスの行く手をさえぎっていた。
「『アレ』、邪魔だから適当に始末してよ♪」
人間の男なら十人中十人が惚れるだろう素敵な笑顔で言った。
しかし残念ながら、僕は男だけど人間じゃない。
はあ、とため息をついた。
「アリス、あなたが得意の魔術を使えばこれくらいの問題は一発でしょう?」
「え〜、めんどくさい」
だだっ子のように切り返される。
「いい年をした大人が……」
「何か文句でもおありかしらぁ?」
「それなりにありますがまぁいいです」
「あいっかわらずナマイキねー、召え魔の分際でっ」
文面だけだとトゲトゲしく見えるかもしれないが、これはお互い公認の『いつもの軽口』だ。
おしゃべりはこれくらいにして、僕は召え魔としての仕事——主からの命令にとりかかった。
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