複雑・ファジー小説
- Re: 紅玉の魔女と召え魔の翼 ( No.117 )
- 日時: 2013/08/21 23:52
- 名前: アルビ ◆kCyuLGo0Xs (ID: aRobt7JA)
18,5. ※若干グロ注意!
-*ゼルフside*-
ぐしゃあ。
目の前の人間は、白目をむいて後ろに倒れた。
頭部は大破し、倒れた途端むき出しの中身がバシャッ、とぶちまけられる。
こぼれた中身の、とくに脳は原型を留めず崩れてスープになっていた。
「生かしておけないんだよ、お前みたいな人間は」
ボソっと俺は呟いた。
それから、ゆっくりと倒れた人間の向こう側を見る。
「……ひっ」
腰を抜かしてへたり込んだ、もう一人の人間がこえにならない悲鳴を喉から絞り出し、必死に後ずさろうとしていた。
俺はそいつに一歩近づく。
するとその男は、びくっとなった後、急に態勢を変えた。
土下座のような格好をし、
「こここ、殺さないでくれ!頼むから!お、おれはそいつに頼まれただけなんだ、そうだそいつが主犯なんだ!だからっ、その殺すのだけは……」
必死で泣きながら命乞いをしてきた。
——無様だ。
これ以上ないくらい醜い。
目の前で、つい先ほどまで仲良く仲間面していた『同胞』が死んだっていうのに、こいつは自分の分の罪を擦り付けるだけじゃなく、その上助かろうとしている。
「……だから嫌いなんだよ、人間は」
「ひっ!?」
俺は何の躊躇も持たず、その男に右手のひらを突き出した。
「お前の脳も、破壊してやろうか」
「う、うあああああああやめてくれえええええ、な、なんでもす……」
ぐしゃ。
どさり、と目の前の『人間だったらしいモノ』は倒れた。
高そうな毛皮が敷かれた床に、さっきのヤツと同じ物をぶちまける。
血やら、脳の破片やら何かの液体やらが2人分、混ざった。
時間差で腐臭がだんだんきつくなってくる。
俺はその臭いを避けるように外套の襟をたてて、さっさとこの居るだけで虫唾が走るような部屋を出た。
……同種族をけり落として掴んだ大金で、吐き気がするくらい豪華絢爛に着飾った部屋なんて、本当に虫唾が走る。
部屋主の脳漿でも塗りたくったほうがよっぽどお似合いだろう。
しばらく廊下を歩いていて、俺ははたと思い出した。
「……そういえば、もうすぐか?」
外套の懐から、懐中時計を取り出して時刻を見る。
……ふむ、もうすぐだな。急いでこの城からも出なければ。
——もうすぐ、宮廷魔導師を装った革命団の3人が大臣と接触するために、ここへやってくる。
その指示をあたえた張本人がここにいては、ヘタに信用を失いかねない。
俺は帽子をかぶりなおして、真っ赤な絨毯が敷き詰められた、ディオロラ王城の廊下を歩いた。