複雑・ファジー小説
- Re: 紅玉の魔女と召え魔の翼 ( No.16 )
- 日時: 2013/08/01 14:06
- 名前: アルビ ◆kCyuLGo0Xs (ID: 6Ex1ut5r)
12.
そうこうしているうちに、ハウリーの案内で僕らは集落の外れに来た。
「ここから先はもう森だ。集落の領地じゃない。まあ、ウチらの種族からすれば庭みたいなもんだから、下手するとまた捕まえられることもあるんだけど……」
「あら、あたしたちの実力ならそんなヘマしないわよ〜」
「まあさすがに二回目はないと思います」
「だよな。お前ら話かたからして強そうだし」
ハウリーは少し寂しそうな顔で、別れを告げようとした。
そんなときだった。
「おい、待て」
なんだか、先ほどから別れを告げようとすると必ず邪魔が入る。
声のかかった方を見た。
「る、ルーガ!?」
ハウリーの焦ったような声が聞こえた。
ルーガは相変わらず冷たい目付きでハウリーに言った。
「リーダーと呼べと言っただろう。忘れるとすぐこうだ」
「リーダー、なんでここに……。族の男らと会議してたんじゃなかったのか!?」
「お前が挙動不審だったから抜けてきた。……案の定、だな」
最後のところではルーガは僕とアリスを睨みながら言った。
……僕は、そこまで彼から恨まれるようなことをしたのだろうか?
ハウリーは噛みつくようにルーガに言った。
「ライトとアリスは逃がすんだからなっ!まだ捕らえるつもりだったら、リーダーでも通さないっ」
「ほう、刃向かうか、ハウリー。……族長たるこの俺に、かなうとでも本気で思っているのか?」
瞬間、アリスに(主に度胸を)鍛えられた僕でもゾワッ、と鳥肌がたった。
ルーガが、静かに殺気を帯びたのだ。
(ふむ……獣人族の族長なだけあって、やはりなかなか強いな……)
落ち着こうと、僕は冷静に彼を分析した。
「ルーガ……お前、やっぱりおかしいよ」
緊迫した空気のなか、ハウリーが震える声で言った。
その声は、恐怖で震えているというより、変わってしまった親しい者を案じて悲しんでいるように感じた。
「何を突然?俺は何も変わっていない。」
「変わっちまったよ!ルーガ、確かにお前って前から冷たそうなヤツだったよな。でも、なんだかんだ言ってホントはすっげえいいやつだった。なのに今は違う!」
ハウリーは感情的になって、ルーガに訴えた。
しかし、いい加減にこのやり取りにしびれを切らしたのか、彼は、
「いい加減にしろ。俺の邪魔をするな、女の分際で」
恐ろしく冷たい声で凄んだ。
——それが、合図だった。