複雑・ファジー小説
- Re: 紅玉の魔女と召え魔の翼 ( No.25 )
- 日時: 2013/08/04 10:40
- 名前: アルビ ◆kCyuLGo0Xs (ID: 6Ex1ut5r)
16.
それから、ルーガはハウリーに任せて後でまた落ち合う約束をし、僕は一度アリスを探すことにした。
グリフォンの姿で低空飛行をし、緑の中に少しでも銀色が見えないかと目を凝らす。
ルーガのあのうわごと……もしあれが本当なら、状況は最初に思い描いていた『ただの秘薬の素材集め』とは全く違う方向になる。
一刻も早くアリスに報告しなければ。
それにしても、だ。
この森の統括主……ドリアーネは、結局何をたくらんでいるんだ?
ドリアーネ……またの名を『ドライアド』と言い、樹に宿る魔物のことをいう。ドリアーネは普段は滅多にその姿を見せず、ただただ宿っている樹の中で静かに長いときを過ごす、一見すれば無害な魔物だ。
しかし、宿っている樹のもとを美しい男性や少年が訪れると、緑髪の女の姿で現れ、彼らを取り込んで養分にしてしまうらしい。
……まあ、後半の、とくに『美しい男性』の部分は諸説あり、逸話だったりもする。
僕は人間の言う『容姿の美醜』には興味もないし、実感もとくに持たないが、客観的に分析することはできる。
その分析によれば、ルーガはかなりの美青年といえる。暮らす場所が秘境ではなく中央地方とかだったら、バード(俳優や詩人のような役職)としてとてつもなく売れただろう。
もしルーガが、この森の主・ドリアーネが宿っている樹の近くを、そうとは知らずに狩りの最中などで通ったとしたら。
(いや、しかし……それでも何かおかしい……?)
ドリアーネは、なぜその生態のとおりに彼を取り込んで養分にしなかったのか?そしてなぜドリアーネと接触した(と思われる)ルーガは、身体のみ無事で人格が変わってしまったのか?
(……駄目だな、おそらく僕ではわからないか)
と、そこに。
やっと目標人物を見つけることができた。
『アリス、……?』
——ついでにもう一人、見知らぬ顔も。