複雑・ファジー小説
- Re: 紅玉の魔女と召え魔の翼 ( No.27 )
- 日時: 2013/08/04 10:45
- 名前: アルビ ◆kCyuLGo0Xs (ID: 6Ex1ut5r)
18.
またまたアリスの説明では無駄話が多かった為、まとめると、
1 アリスはドリアーネの持つ水晶を手に入れたがっている。
2 代わりにドリアーネには『堕天使の惚れ薬』ができ次第、一滴お裾分けする。
3 もしドリアーネが交渉を飲まない場合はアリスが森に放火する。
……だそうだ。
『あの、失礼ながらこれは"交渉"と言えるのですか?とくに3番の条件が非常に疑問なのですが』
「人生ときには強行突破も必要よー」
一度この人の人生論の決定基準を拝見してみたい。
『……その水晶が、秘薬の材料なのですか?』
「そう。ほんのひとかけでいいのよ〜『魂の欠片』だから」
……ん?魂の欠片?
『あの、まさかそれって』
「キヒヒ、そうだよぉ、これは族長の魂。すぐに食べてもいいと思ったんだけどぉ、ちょうどアタシがこの子を捕まえたとき、この子もうすぐあの集落のリーダーになる時期だったんだよねぇ。これは利用できると思ったのよ♪」
……なんということだ。
いや、今はとりあえず落ち着いて質問しよう。
『だとすると、もしやルーガさんの人格が変わってしまったのは……』
「ああ、アタシがニセモノの『仮の魂』を代わりに置いといたからね。元の人格には極力似せたやつを造ったんだけどぉ、まあ幼馴染みみたいな付き合いの長いヒトにはバレちゃったかもねぇ」
ドリアーネはそこで、アリスに向き直った。
「魂の欠片が欲しいんだったら、それこそあっちの族長の実体にちょうどヒトカケラ残ってるんじゃなーい?『本物の魂』がまだ体内に残っていたから、召え魔くんの話で"うわごと"を話すことができたんだろうしぃ」
それに、とドリアーネは続けた。
「アタシは秘薬なんていらないもの。だってこれから、あのニセモノの族長を使って集落の全員を食べちゃうつもりだしぃ♪」
『なっ……!?』
「キヒヒ、召え魔くんは意外に思ったぁ?アタシ、別に男じゃなくってもヒトガタの生き物ならみんな食べられるのよ〜できれば美男のほうが美味しいんだけどぉ♪でもアタシ、今すっごくお腹すいているからなんだっていいのよねぇ」
……滅茶苦茶である。
「あんたたちも、アタシの『食事』に巻き込まれたくなかったら、さっさと森から出てけばぁ?どうせ誰にも知られていないちっちゃな集落のひとつやふたつ、壊滅したって関係ないでしょ♪」
どこまでもふざけた口調でドリアーネは言う。
「ふーん、なるほどねー。どうしよっか、ライト」
アリスが聞いてきた。
ドリアーネはまるで、僕らが素材だけ集めてさっさと森から出ていくことを確信するかのような笑みをうかべている。
まあ、普通なら誰しもがそうするだろう。
下手をすれば、魔物に自分の魂を喰われかねないし、秘境にある小さな集落など助けたところで何の利益もない。
——しかし、だ。
ドリアーネは、この紅玉の魔女がとんでもない変人で、生粋の気分屋であることを忘れている。
「あたし決めるのめんどくさいから、ライトがどうしたいかでいいわよー」
「は?ちょっとあんた、なんでそんなこと召え魔なんかに決めさせるのよ?」
ドリアーネが戸惑ったように口を挟んだが、僕は気にせず言った。
『アリス、——とりあえずこの人燃やしましょうか』
「オッケーい♪」
ゴアアァっ!!
とアリスの周りに火の玉……否、炎の玉がいくつも出現した。
「は、ハアアっ!!??ふざけてんのか、お前ら!?」
ドリアーネが本性を表した瞬間だった。