複雑・ファジー小説

Re: 紅玉の魔女と召え魔の翼 ( No.33 )
日時: 2013/08/04 10:49
名前: アルビ ◆kCyuLGo0Xs (ID: 6Ex1ut5r)

21.

「んーっと……もうちょいかしら」

アリスは地面に片膝と左手の平をつき、探るように目を閉じていた。
そして今、そのアリスを中心に、森の地面にはいくつもの青い波紋が水のように広がるという幻想的な光景が展開されていた。
アリスの『探索魔法』である。
周りを興味深そうに取り囲んでいる、もはやギャラリーと化した獣人族たちの中、アリスは急に目をパチッ、と開いた。
続いて形のよい唇が上向きの三日月形になり、

「見ーつっけた♪」

かくれんぼで遊んでいる無邪気な子供のように言った。

「ライトーちょっとこっち」

『はい』

僕が近づくと、アリスは僕の頭に軽く手をのせた。
瞬間、僕の脳内でアリスから送られた情報がスパークする。

「んじゃここにいるみたいだから。オーケー?」
『了解です』

何も知らない者からすれば、このやりとりは意味不明もいいところだろう。
しかし僕はそれなりにアリスとの付き合いも長く、耐性がついているためすぐに指示がわかる。慣れとは本当に恐ろしい。

僕は了承をして、即座に飛び立った。

-*-*-*-

「おい待て!」

しばらくすると、後ろから声がかかった。
首だけ振り向いて確認すると、ルーガが木から木に飛び移りながら追いかけていた。

『……恐るべき身体能力、ですね』
「普通だ。それより俺も行く。あの植物女のとこに向かっているんだろう?」
『ええ。……よろしければ背にどうぞ、見失いますから』
「ありがたいな、悪い」

ひときわ高く飛び、ルーガは僕の背に飛び乗った。
今日はいろんなヒトを乗せるな……。

「レノワール、だったか?」

ルーガが確認するように尋ねてきた。

『ライトでも結構ですが、馴れ合いがお嫌いでしたらレノワールでもいいですよ。ルーガさん』
「気が利きすぎるな、お前。まあいい。……ついてきたのには、ハウリーを助けることもあるがもうひとつ理由がある」
『……?如何いたしましたか』

僕は与えられたドリアーネの位置情報をなぞりながら飛行し、ルーガの話を聞いた。

「最初に会ったときに、何も信用せずに捕らえたことを詫びたい」
『あれは偽物だったときの出来事でしょう、気にする必要はないのでは』
「いや、そもそも植物女に捕らわれた時点で俺に落ち度があった。すまない」

この位置からは見えないが、ルーガは頭を下げたようだった。
本当に律儀だ。

『アリスにぜひ見習ってもらいたいですね……』
「ん?なんと言った、レノワール」
『いえ、ただの独り言です。その件については、僕もとくに気にしていませんから。……もうすぐ着きますよ』
「む、そうか」

ジャキっ、という音がした。武器の準備をしたのだろう。
和解をしたルーガと共に、僕はドリアーネの巣に乗り込んでいった。