複雑・ファジー小説

Re: 紅玉の魔女と召え魔の翼 ( No.34 )
日時: 2013/08/04 10:50
名前: アルビ ◆kCyuLGo0Xs (ID: 6Ex1ut5r)

22.

「……あれか」
『ですね』

木が密集しているなか、ポツリと独立するかのように小さく開けた場所に、ドリアーネはいた。
ハウリーは植物に絡みつかれて身動きがとれないようにされていた。
急いだ方がいいだろう。

「俺はここから飛び降りて、直接植物女の動きを封じる。ハウリーは頼んだ、レノワール」
『わかりましたが……あなたがハウリーを助けなくてもいいのですか?』
「いや、多分ハウリーはお前に助けられたほうが嬉しがるぞ」

…………?どういう意味だろう。

「……妙なところで鈍感だな、お前」
『あの、いったい何のことですk』
「よし行ってくる、あとは任せた」

そう言って、ルーガはこちらの返事も聞かずに飛び降りた。
よくわからないが、とりあえず今は優先順位がある。
「おい、ドリアーネ!上を見ろ!」
「なっ!?チィッ、しつこい奴等が……」

ドリアーネは舌打ちをしてルーガに気をとられた。
その間に僕はハウリーの後ろに回る。

「え、リーダー……?」
『ハウリー、じっとしていてください』
「ライトも!?」

驚いているハウリーをよそに、僕は爪やくちばしを使ってハウリーを拘束している植物を切断した。
こういう事態のために、普段から磨いでいたので切れ味はかなりある。
ブチッ、と音を鳴らして植物は切れた。

「あ、ありがとうライト……」
『お礼ならルーガさんに言ってください。僕1人ではおよそ無理だったかもしれないので』

ルーガについてきてもらったのは、ある意味正解だった。
ルーガは、偽物のときよりも遥かに強かったからだ。

「死ねえええぇ!!」

ドリアーネが触手のように操る植物を、

「一度は望み通りに死んでやっただろうが」

器用に避けつつ、短刀で切り落とす。
植物の切った箇所からは、まるで血のように緑の液体が流れ出た。おそらくこれがドリアーネの血なのだろう。

『ハウリー、ルーガさん、乗ってください。"そろそろ"だと思うので』
「あ、うんわかった」
「……そろそろ?」
『すぐにわかります』

僕は含むように答えた。会話を聞いていたドリアーネが、すかさず割って入る。

「逃がすかあああ!!アタシの!アタシの餌ぁ!!」
「全く耳障りだな、少しは静かにできないのか。ガキでさえできる事だぞ」

ザクッ、スパンっ!
気持ちよいほどルーガの短刀はよく切れた。

「貴様あああ!!」
「うわあ、ドリアーネすごいことになってるなぁ……」
『あれが本性ですよ』

僕とハウリーが話しているうちにルーガは適当に戦闘を切り上げ、こちらへ駆けてきた。
すでに背に乗っていたハウリーに少し詰めてもらい、ルーガも飛び乗る。
彼が乗った瞬間、すぐに僕は飛び立った。

「ま、待て、って……お前らぁ……!」

ドリアーネはもうボロボロな様子で、しかしその目付きだけは凄まじい執念で僕らを見上げていた。