複雑・ファジー小説

Re: 紅玉の魔女と召え魔の翼 ( No.35 )
日時: 2013/08/04 10:52
名前: アルビ ◆kCyuLGo0Xs (ID: 6Ex1ut5r)

23.

「よ……よかった、ウチ助かったのか……!」

僕が2人を乗せて飛行していると、ハウリーは未だ実感がわかない様子で独り言のように言った。

「ああ。無事だったか?」
「……うん。あ、それよりっ!」

しかし、助かったことに安堵したのもつかの間、
なぜか彼女はルーガにつかみかかった。

「うわ!?なんだ、いきなり」
珍しく驚いたような声のルーガ。ハウリーはそれにはお構いなしに言った。

「ルーガ!お前元に戻ったのかっ!!」
「ん?ああ。レノワールの主……紅玉のなんとかだかに、」
『アリスですよ』
「そうだ、そいつに戻してもらった」

ハウリーは、とたんにヘナヘナと座り込んだ。

「……おい、ハウリー?」
「そっか……全部元に戻ったんだ……。うう、ウチ、ルーガがあんなやつのままだったらどうしようかと……」
「なっ、おい泣くな!?レノワールの羽が汚れたらどうするんだ馬鹿っ」

そこなんですかルーガさん。

「あ、ゴメン、ライトっ!」
『いえ、お気にせず』

と、そんなこんなでハウリーがお礼を言ったり再び泣いたりしているときだった。

「………〜ぃ、お〜いちょっと気づいてるー?」

下を見る。

『アリスですね』
「あ、ホントだ」

身を乗り出すようにしてハウリーも地上にいるアリスを確認した。
そんなハウリーをアリスも見つけたらしく、

「上手くいったみたいねー?」

と、両手をメガホンにして言ってきた。

『はい、もう思う存分暴れて結構ですよ』

僕がそう言うと、アリスはニヤリと笑った。

「ライト?どういう意味だ?」

「ほう、面白そうだな。観戦はしてもいいのか?」
「ちょ、ルーガなんだよその獰猛な笑い、なんか怖いぞっ」
『閲覧は自由ですが、自己責任ですよ』

ドリアーネのもとへ嬉々として向かうアリスを眺めながら僕は言った。

——《ストレス発散は、出来るときにやっとかないと♪》

風にのって、そんなセリフが聞こえたような気がした。



後日。
ドリアーネの森は、森中のモンスターたちが以前の主を半殺しにした(というかもうほとんど死んでいた)ある人物を新たな主人と認めていた。
その人物は旅人だったため、モンスターたちが必死で止めたにも関わらず、すぐに森から姿を消してしまったのだが……。
それ以降、『ドリアーネの森』は『紅玉の森』に改名されたらしい。

——まあ、それはまた別の話。