複雑・ファジー小説
- Re: 紅玉の魔女と召え魔の翼 ( No.7 )
- 日時: 2013/07/30 15:54
- 名前: アルビ ◆kCyuLGo0Xs (ID: 6Ex1ut5r)
7.
「あ、アレはそのっ違うんだ!お前を助けようとしたんだよっ」
「助ける、と言いますと?」
獣人族の少女は、どこか必死な様子でまるで弁解するように早口で捲し立てた。
「あの花!アレ、危険なんだよっ花粉の表面の方は大丈夫なんだけど、下の方は毒があって危険なんだ!お前、なんかわざわざ花粉に近づいていたし、足でも滑らせて花粉の中に落ちていたら、ぜっったいに死んじまうから、だからえっt」
「わかりました、大体の理由は掴めましたから落ち着きましょう」
「え、あっ、うん……」
獣人族の少女はそれだけで急に黙った。耳もシュン、とたれて縮こまる。
……うーん、これは、ひょっとしなくても、僕は怖がられているのだろうか。
たまにあるのだ。僕としては、最大限の敬意を払って接しているつもりが、かえって相手を怯えさせてしまうことが。
一体何がいけないのだろう……言ってくれれば僕としても助かるのだが。
閑話休題。
とりあえず、彼女は僕を襲ったのではなく助けてくれたらしい。……助ける方法にやや疑問が残るが、まあ彼女なりに配慮してくれたのだろう。
「あ、あのさっ」
急に彼女がまた口を開いた。
「なんでしょうか」
「なまっ、名前!まだウチ、お前のこと知らない、から……えと」
相変わらず真っ赤で、少々どもりながら言った。
そういえばすっかり忘れていたな、失態だ。
「これは失礼いたしました、名乗り遅れましたね。僕はブライアント=レノワール……よろしければライトとお呼びになってください。本名ではご不便に思えるので」
「わかった、ライト、だな?本名がブライアント=レノワール……よしっ、覚えた!」
わざわざ僕の長ったらしい本名まで繰り返し覚えてくれた。以外と丁寧主義なのだろうか。
「あ、それでウチはな、『ハウリー』って言うんだっ。……えっと、男みたいな名前だけど……」
「ハウリーさんですか」
「っ、違う!ハウリーだって!」
……ん?僕は聞き間違えたとは思えなかったけれど。
「『さん』なんかいらないっ」
あ、そういうことか。
「ああ。呼び捨てでよろしいのですか?」
「当たり前だ、ムズムズするだろっ」
「わかりました、ご希望ならそう呼ばせていただきます」
こうして、僕はハウリーと知り合った。