複雑・ファジー小説

Re: 紅玉の魔女と召え魔の翼 ( No.75 )
日時: 2013/08/09 12:06
名前: アルビ ◆kCyuLGo0Xs (ID: I/L1aYdT)

7.

「……なんだ、こいつ?グリフォンの妹か?」
「違いますよ」「そうでーす♪」

僕とセラフィタは同時に別々のことを言った。

「どっちだ」

ゼルフはややあきれ気味に尋ねたので、僕は否定した。

「違います。セラフィタさんも余計なこと言わないでください」
「ちぇー、さっきはセラのお兄ちゃんのフリしてたのにさぁ」
「演技です。それともあのまま助けに入らないほうがよろしかったですk」
「すいませんでしたー、助けてくれてアリガトーね」

全く気持ちのこもっていない礼を言われると、かえって不快になるものなのだな、と学習した。
ゼルフは話を戻してセラフィタに聞いた。

「まず、なんでいきなり革命団に入りたいんだ?お前も国に恨みでもあるのか?」
「恨みー?ないよ〜そんなの。ここは森なんかよりもずっと楽しいし、最近のセラの中では一番のお気に入りだもん♪」
「……じゃあなんでまた?」
「おもしろそうだから〜」

事もなげにサラリとセラフィタは言った。

「いろんな人のお店とか家とか滅茶苦茶にして、怒らせたり困らせたりも楽しかったんだけど〜、今度は『革命』でしょ!?きっと国中の、それも王家とかは『困る』なんてものじゃないんだろうな〜♪あー考えただけでワクワクするっ!」

セラフィタはかわいらしい桃色の瞳をキラキラさせながらそう話す。
そうしていると、年相応の少女のようで違和感はないが……言っているセリフがこれなのだからある意味、悪魔だ。

「要するに……お前はただ単に内部かく乱を起こしたいだけか」
「よくわかんないけどそんな感じ〜」

フォルスがゼルフに尋ねた。

「どうするんだ?革命の首謀者って確かお前じゃないだろ」
「ん?ああ確かにそうだが、人材選びや作戦とか、その他もろもろは全部俺に任せられている」
「丸投げじゃねーか」

フォルスは即答でそうつっこんだ。
まぁ、その『首謀者』には失礼かもしれないが、確かにそれは少々適当過ぎると思う。むしろそうなってはゼルフが革命の首謀者であるのと変わりないのでは……。

「だから言っただろうが。戦うことしか能がない馬鹿人間でしかないんだよ、逆に俺が担当しなかったらあいつら、革命の計画を立てた2日後に捕まるぞ」
「はや……」
「へーそっか馬鹿なんだ〜?」

なぜかそこでセラフィタがニヤリ、となったがまぁ見なかったことにしよう。

「エルフ、お前何か特技でもあるのか?」
「セラはセラフィタだよー。セラはね、いろんな人の声のモノマネができるんだよっ。すごいでしょ!」

えへん、とセラフィタは胸を張った。
はたしてゼルフの判断は、というと、

「声帯模写か……。割とちょうどいい人材だな」

意外と使えそうであった。

「幻影使いが幻影で王家の者に成りすまして、エルフが声を真似て喋れば、王家の情報が得られそうだな」
「おお!じゃあセラ、フォルスと組むんだ〜?」

セラフィタがそこまで言うと、それまで黙って聞いていたフォルスが割って入った。

「おい、ふざけるなよ。俺は他人となれ合うのが嫌いだって言っていただろうが。2人組なんて聞いてないぞ」
「よろしくねフォルス♪」

セラフィタは聞く耳持たずだ。ゼルフも案外、この計画で賛成らしく、さっそく何か作戦を練っているように考えている。
フォルスは僕のほうを見てきた。
そして僕の答えは、

「いいのではないですか?先ほどセラフィタさんを保護するときに、フォルスも協力したんですし、少なくとも『他人』ではないでしょう」
「いやそれはライトg」
「もういいじゃんかー、ね、それより何をどうやって王家の人たち困らせるのか考えようよっ」

フォルスはチッ、と舌打ちし、『裏切ったな』という風に僕を睨んだ。
無表情のまま目つきだけ鋭くなって、怖いというよりさらに不気味である。
僕はコソッ、とフォルスにだけ聞こえるように言ってみた。

「嘘ばかりついていると罰が当たるのですよ」
「……お前、最近アリスに似てきたぞ」

心外である。