複雑・ファジー小説

Re: さぁ 正義はどっち ?【第2回オリキャラ募集】 ( No.106 )
日時: 2013/08/05 17:13
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: TM72TTmK)

013 カメルリング王国ルート


「・・・ジョレス君といったね、君」
ふいにミルフィーユが振り向いてこちらを見た。先ほどまでローストマトンをぱくついていたのに、肉を突き刺したフォークを右手で持ったままジョレスを見る。
今度は誰だ?とジョレスが目をしばたき、ノイアーがその腕の間からじっとミルフィーユを見上げる。
「そう、ですけど・・・」
「少しルーク君を預かってくれないかね?いや丸一日じゃない、2時間程度でいいんだ。ちょっといいことを思いついてね」
ミルフィーユは微笑を浮かべたまま、中腰になる。隣に座っていたラグも急いで残りの肉を食べ、ナプキンで口元を拭いていた。
どうやら二人で何処かへ行くらしい・・・何処行くんだろう僕を置いて・・・。
「え、と・・・俺は別に構いませんけど・・・」ジョレスが気おされた様に了承すると、ミルフィーユはお礼を言って女将さんに料金を払うと、ラグと共にすばやく店を出て行った。
「いいことって何だろうね、ボウヤ。新しい発明品でも思いついたのかしら?」
ケーキのクリームを絞りながら、女将さんはゆっくり閉まっていく扉を見てつぶやく。ルークも少し不安そうに扉を見つめ、それからカウンターに向き直った。
お皿に残るローストマトンを食べないと。さすがに冷えてしまうと肉が硬くなってしまう。

「はいお待たせ」ワンホールのケーキが出来上がり、女将さんは両手で皿を持って、慎重にカウンターにソレを置いた。
「ありがと女将さん」いいながら、ジョレスはフォークで少しケーキの側面を削ると抱えていたノイアーにソレを差し出す。
「・・・」だらんとたれていた細い腕をのばし、フォークを受け取りながらジョレスを睨むノイアーだったが、一口食べると不機嫌な顔にビックリするくらいの幼い表情が広がる。
年相応の小さな少女の表情に、ルークも一瞬ジョレスがにやける理由がわかった気がした。
「うまいっ!なっなんだこのケーキはうますぎるだろ!お前好きだ」
ノイアーは片手でフォークを持ったまま、青い瞳を輝かせて女将さんに叫ぶ。
「え、それおごってあげた俺にいう言葉じゃないの?」
ジョレスの手から逃れたノイアーはフォーク片手にルークの隣の席に飛び乗る。
そして鼻や頬にクリームを沢山つけながら、ご機嫌な様子でケーキに喰らいつく。
人というよりは、小さな獣の少女が必死に獲物を咀嚼しているような感じだ。
「・・・もしかしたら、いい伝手でも探してきてくれているのかもしれないよボウヤ」
ノイアーを自分の子供のように眺めていた女将さんが、皿を洗いながらルークに笑いかけた。