複雑・ファジー小説
- Re: さぁ 正義はどっち ?【第2回オリキャラ募集】 ( No.117 )
- 日時: 2013/08/07 01:33
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: aTTiVxvD)
012 ミカイロウィッチ帝国ルート
「—というわけだが、質問は?」
訳がわからないので最初から説明してください、というエディの要望に答えて、この五人のグループをまとめ上げている団長のヴィトリアルが説明をしてくれるのだが、エディにはやっぱり理解できない。
机に腰掛けたまま、肩をすくめて言う。
「やっぱり、理解できないですよ。あたしの弓矢の才能を気に入ったシェリル皇女があたしを拉致した時点でもう良くわかんないです。あたし的を全部射てないのに」
エディの嘆きにも似たその言葉を聴いて、白い肘掛け椅子に再び座ったアーリィがピンクの杖を弄繰り回しながらこちらを見ずに言う。
「何言ってんの、4つの的をすべてど真ん中で射れば、アクシデントのせいで撃てなかった矢も、もちろんいい結果を出してたはずでしょ」
エディが黙っていると、イヴの兄、クウヤがおかしそうに笑い出す。
翡翠色の髪を揺らして、イヴとおそろいの金色の瞳を細め、腕を組みながら言った。
「なに、皇女様エドウィンのこと拉致ったの?ひどい職権乱用だな・・・まぁ事実皇族の権力で何でも許されちゃうけどさぁ」
そんなクウヤに、エディは机の上から怒ったように目を吊り上げた。
膝にぎゅっと握った拳をのせて、その場にいるみんなに対して怒鳴る。
「笑い事じゃないの!何で急に拉致られて盗賊団に入団してるの?しかも父さんと会えないって・・・もう家に帰れないってどういうことですか!これ、もうふつうに誘拐事件でしょ!」
怒りで興奮状態になったエディを落ち着かせようと、ヴィトリアルがなだめるが、エディは拉致されたことに憤慨していた。
まだ伯爵の娘として箱庭にいたほうがましだった。そこからいつか抜け出せるはずだったのに、そして旅をして芸術家になるはずだった。
だが皇女に気に入られて拉致されて誘拐されてしまった今、芸術家になる夢は見事に打ち砕かれ、次なる転職先は盗賊団。
まったくもって理解不能だ。
「落ち着けエドウィン。もう家のことは忘れろ、これからは盗賊団がお前の新しい家族で、この王宮がお前の家になる。逆らえば・・・わかってるだろ?」
ヴィトリアルが言うことを聞かないエディに、すこし凄みのある声でいい、エディは眉を吊り上げながらも黙った。
この部屋が答えである。言うことを聞かなければ、拷問にかけられるのだろうか、とにかく痛めつけられるのは目に見えている。
この帝国で第一帝位継承権を獲得する皇女シェリルの権力は絶大である。
ヴィトリアルが先ほど説明した内容では、この帝国公認の盗賊団もシェリルの創りあげた有能な部隊なのだ。
戦ごとに興味のあるシェリルは部隊を作り上げ、戦士達を沢山の場面から選りすぐって手駒にしているという。
ちょうど今日、優秀な弓兵を欲していたシェリルの目の前にエディが現れてその才能を発揮したため、ショーケースからお菓子を選ぶように、エディは皇女様にオーダーされてしまったという。
このオーダーは覆らない。逆らえば殺されるかもしれない。皇女の手のひらに乗ったものは、もう逃れることが出来ないのだ。
(父さんにもリンにももう会えないなんて・・・父さんは、あたしが拉致されたこと知ってるのかな?さすがに心配してもらえてるよね?)
絶望的な気分でエディが無言になっていると、イヴが優しくエディの肩に触れた。
金色のおっとりした瞳が、エディを優しく包み込む。
「ここは、そんなに居心地の悪いところじゃないよ・・・きっとエドウィンも気に入る・・・と思うよ、ね、兄さん?」
イヴに見上げられて、妙に嬉しそうに笑うクウヤは腰のベルトにさした剣の柄に手を置きながら、何てこと無いような物事を笑い飛ばすように言った。
「イヴの言う通りだ、そんなしょげなくてもそのうち慣れるからさ。新しい人生の門出だと思って、さっさと受け入れた方が楽だぜ?」
エディは弱々しく首を振るが、クウヤの言った通り、もう受け入れるしかないのだ。死か手駒かなんて、もう答えは決まってしまっている。
「・・・わかりました、もう受け入れるしかないんでしょ」
むすっとしてエディが腕を組んで言うと、やっと分かってくれたかと、ヴィトリアルが脱力する。
結構このシリアスな空気にうんざりしていたようだった。
肩の荷が下りたヴィトリアルは、腰に手を当てて茶化したように言った。
「それじゃさっそく、誘拐常習犯のシェリルサマに会いに行くか!」