複雑・ファジー小説
- Re: さぁ 正義はどっち ? 参照千記念のアンケート! ( No.133 )
- 日時: 2013/08/08 12:45
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: aTTiVxvD)
018 カメルリング王国ルート
「僕が魔法?そんなわけ無いでしょ」凝視してくるユニートにルークはあるわけ無いと首を振る。
そもそも16年間魔法の訓練などしたことが無いし、羊を守るためにオオカミやコヨーテとやりあったとき、魔力の欠片も放出したことはなかった。
「魔力持ってるとしたら・・・ノイアーじゃないですか?彼女だけシールドの外にはじき出されちゃったし、彼女の手をつかんだら僕も吹っ飛んだんですよ」
痛む背中をさすりながら、ルークはぽかんと口を開けてしりもちをつくノイアーを指差しながら言う。
ノイアーは我に帰ると、いまだ戦いを続けるジョレスとリグ僧侶、キリエ牧師の方へ視線を送り、うずうずしたように指先をぴくぴく動かしている。
「いやそれは違うだろ」とユニートは黒い書物を抱え込みながらルークを見上げる。
「いいか、良く見てろよ?」言いながらユニートは片手をシャボン玉のようなシールドに近づけた。
すると、ジョレスの剣のように貫通すること無く、ユニートの手はシールドの壁に阻まれてピタリと停止する。
魔力を孕んだものはシールドを通過することは出来ないと、先ほどユニートが説明した通りだった。
「初めから内部にいれば弾き出される事は無いんだ。その代わり、シールド内に入ったらシールドを破壊するほか、出る方法は無いんだよ。魔力から身を守るほか、魔力を持つものを閉じ込める檻の代わりにもなるんだ」
ユニートがシールドの応用術を教えてくれるが、ルークは顔をしかめたまま立ち上がった。
自分が魔力を所持しているなどとても信じられない。そこで、恐る恐るシールドへ指を伸ばす。
「あれっ」だがその指は壁にのめりこんで、どんどん貫通していく。
腕まで外に飛び出して、片足もふつうにシールドから外に出る。
そのままするっと外に出ようとして、右手だけがシールドの外に出ることを拒みルークはつんのめる。
右手がシールド内に取り残され、固定されたように抜くことが出来ない。
「え、右手だけに魔力があるの?」
「そうじゃない違うよ、君が右手に持ってるナイフのせいだ」
ユニートに促されて果物ナイフを落とすと、右手は何事も無かったかのようにシールドから外に出た。
「驚いたな・・・いやいやうん、これでいいんだよ!ここに来る必要さえなかったね!っというより、早く誤解を解かないと死人が出てしまうよ!」
シールド内に落ちた果物ナイフを興味深そうに眺めていたユニートは、突然我に帰って王女に向かって叫んだ。
遅すぎる対応だったが、ありがたかった。本気モードを出して戦いをされたら、誰かが死んでしまう。
「フランチェスカ様、我々はカメルリング王国の魔導師です!侵入者ではありませんから司祭たちを止めてください!」
「え・・・?でも」
唖然と戦う彼らを怯えた様子で眺めていたフランチェスカ王女は、ユニートの声に動揺したように剣をふるうジョレスを見た。
「彼がああしなければ、今頃我々は僧侶殿の魔術で死んでいたかもしれません。だから早く、止めてください!」
死んでいた、のワードに反応して、戸惑っていた王女がその柔らかな声を張り上げる。
どうやら興奮すると魔力の制御が利かなくなるらしく、耳飾が再び怪しく青い光を放つが、あの凄まじい魔法が放たれることは無かった。
「やめてください皆さま!この方達は王家に仕えるものたちです、剣を向け合う相手ではありません!」
よく通るその声に、ジョレスとキリエ、リグがお互い距離をとる。
双方にらみ合っているが、王女の言葉に従っているようで、ルークは安堵したように床へ座り込んだ。
「お騒がせしましたね、よくこの修道院の書架を利用させてもらっていたので大丈夫だろうと、連絡をしないで押しかけた私のせいですね」
ユニートが脱力したように謝罪すると、ミセリコルデを鞘に収めたキリエが十字架を震える手でつかみながら、こちらも侵入者と勘違いしていましたと頭を下げる。
ユニートが王室魔同士の勲章を見せると、先ほどとは打って変わって平和なムードがあふれ出し、ルークは果物ナイフを震える手でベルトにねじ込んだ。
戦いとはこんなにも恐ろしいのだ、傍観していただけでこんなに恐ろしいのに、こんなことで戦争に出れるのか?などと思ってしまう。
そんなルークとは正反対で、俺の雄姿見た?と疲れて座り込んだジョレスの言葉に、一人だけ戦いをしやがって!と憤慨したようにノイアーが言うのが見える。
戦を生業にしているやからは本当にすごい。
関心を通りすごしてあきれていると、王女がおずおずと尋ねてくる。
一体どういったご用件だったのでしょうという言葉に、ユニートがルークにちらりと視線を送ってから言う。
「実は王女様の所持する、あの属性剣を見せてもらいたくて来たのです」