複雑・ファジー小説
- Re: さぁ 正義はどっち ? 参照千記念のアンケート! ( No.142 )
- 日時: 2013/08/08 14:07
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: aTTiVxvD)
019 カメルリング王国ルート
ユニートの言う王女の所持する属性剣というのは、修道院の中心に位置する巨大な十字架の安置された礼拝堂にあるという。
理由を聞かず、王女は二つ返事でルークたちをそこへ案内した。
礼拝堂は八角形の石造りの部屋であり、宙吊りにされた白い十字架の下に、光を浴びてぼろぼろの剣が台座に突き刺さっていた。
「あれがわたくしの剣、フランベルジュです」
その剣から5メートルほど離れた位置で、王女がくるりとユニートを振り返った。
その海のような青い瞳は、なぜこの剣を見たいのかと、不思議そうにたずねていた。
だがユニートはルークの方を向き、ルークの最も知りたがっていたことを話す。
「魔術を使う騎士についての説明がまだだったね。王国では魔法剣士や魔法騎士と呼んでいる彼らは—」
魔法剣士、または魔法騎士。それは言葉の通り魔術を使うことの出来る騎士の事である。
だが、魔術師とは異なり、一般的に魔力を持つものを介して魔法を使う魔導師の一派である。
魔法剣士・魔法騎士は、剣や武器に宿る魔力を引き出すことが出来、その武器で戦うものの事を指すのだ。
「そして、フランチェスカ様の剣、フランベルジュとは、魔力を持つ魔法剣なんだ。属性剣と呼ばれるのは、持ち手によってその属性が変化することからそう呼ばれてる」
へぇ、と相槌を打っていたルークは腰のベルトの果物ナイフに触れた。
「この果物ナイフも魔力持ってるんですか?」
「おそらくはね」
単なる果物を切断するための果物ナイフが、魔力を帯びた魔法剣なのだという。意味が分からない。
ルークは何も考えず、台所にあった果物ナイフを適当に選んでとってきただけなのだ。
銀色の果物ナイフを怪訝そうに眺めていたルークの肩に手を置いて、突然ユニートが王女に深く頭を下げる。
「フランチェスカ様、この少年にフランベルジュを抜くことを許してくださいませんか?」
えっとぎょっとしていたルークに、フランチェスカは顔色ひとつ変えずに頷く。
「えぇ、構いません」
「ありがたき幸せ。それじゃあルーク君、がんばれよ!」
「えぇ!?ちょ、ちょっと—」どんっと肩を押されて、ルークは戸惑いの声を上げるが、王女に促されて共に剣の元へおどおどと歩いていく。
ミルフィーユやラグの応援の声が聞こえたが、返す気力が無い。
一筋の光を浴びて神々しく台座に突き刺さったぼろぼろの剣フランベルジュの柄を、ルークは恐る恐る掴む。
触れた瞬間、指先からびりびりとした衝撃が走り、凄まじい勢いで体内を駆け巡る。
ベルトにねじ込んだ果物ナイフが、ぼうっと紫色の光を帯びて、バチバチと音を立てた。
「いい感じです、そのまま両手で引き抜いてください」
王女が両手を組み合わせて微笑む。髪飾りが興奮によって真っ青に光を宿した。
「うっ・・・んしょ!」なんともかっこ悪い掛け声と共に、ルークは台座から紫色の光を纏ったフランベルジュを引き抜き、その刃先を天に向ける。
波打つ刀身に、紫色の電光が高速で駆け巡り、空気を引き裂くような音を立て続ける。その雷光がルークの身体まで侵食し、靴の先まで電気を帯びる。
おぉっと後方で待機していた者の驚きの声。ルークも呆然とフランベルジュを掲げてぽかんと口を開く。
すると、フランチェスカ王女が興奮冷めきらずといった感じで歓声を上げた。
「わたくしと同じ、雷属性の魔力をお持ちなのですね!」
言って、その細い指をルークの手に重ねるように添えて、王女自らもフランベルジュの柄を握る。
すると、王女の底なしの魔力とフランベルジュの魔力が共鳴したのか、凄まじい炸裂音と共に、フランベルジュが光を放つ。
「うわっ?!」っとルークが悲鳴をあげるも、王女の手に包まれているため両手を剣の柄から離すことが出来ない。
対する王女は、目を輝かせてフランベルジュを見つめていた。