複雑・ファジー小説
- Re: さぁ 正義はどっち ? 参照四桁ありがとうございます! ( No.150 )
- 日時: 2013/08/09 15:21
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: aTTiVxvD)
四桁記念 番外編002 帝国日常編 絶対信じちゃいけない言葉
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エディが盗賊団に入団してからしばらく経ったある日のこと、エディがリンのマフィンが恋しいとこぼしていたのを聞いたイヴが、それを数個所持してやってきた。
盗賊団のあじと、もとい拷問部屋の秘密通路を抜けた先にある小奇麗な部屋で退屈していた盗賊団たちが、イヴの手の中にある物体を見る。
なにそれ、という質問に、イヴが小さな声で答える。
「マフィン・・・”お菓子あげるから、おいで”」
お盆を持って歩み寄ってきたイヴに、その場にいた盗賊団が眉を寄せながらソレを凝視した。
マフィンというのは薄茶色のふんわりしたカップケーキのことだ。やわらかく触ると少しへこむが、その弾力で元の形状に戻るお菓子だ。
だが、イヴの持ってきたソレは、なぜだか黒いスミの塊にしか見えない。触るとかさかさして崩れそうだ。
・・・どうやらイヴは焼きすぎたようだ。お菓子作り初心者によくあることで、泡立てがうまく出来ないとこうなる。焦げ焦げのマフィンに無言で対応すると—というかむしろ否定の言葉を浴びせると、クウヤに殺されそうな雰囲気だった—イヴがにっこり笑ってそのお盆を差し出す。
「作ったの。食べて」
「・・・・・・」
「遠慮、しないで”騙されたと思って試しにひとつ”食べてみて」
絶対に信じちゃいけないワードを何度も使うイヴ。確実に食べたらどうにかなってしまうのではなかろうか?
「イヴは・・・マフィン見たことある?」エディが恐る恐るたずねる。もしかしたら焦げているのではなくチョコレート味のマフィンであるかもしれないと願いたい。
だがイヴはううんと首を振り、ちょっと照れたように笑った。
「今日はじめて作ったの・・・・・・まずそう?」
「そ、”そんなことないよー”、”ふつうにおいしそう”」
マフィンを見つめてしょんぼりするイヴの言葉に、アーリィが触発されたためか絶対に信じちゃいけないワードを連発する。
イヴを泣かせるかマフィンを喰うか、どちらを選べといわれたらマフィンを食うしかないが・・・いや、ちょっと苦い思いするだけじゃないか?
イヴが喜べばそれで良いんじゃないかな、と葛藤しているエディの横でツヴァイが髪をいじくりながら言ってはいけないワードを言おうとする。
「どこがおいしそうに見え—っ」
その言いかけたツヴァイの口を平手打ちでもするかのような勢いで押さえつけたクウヤが、恐ろしいほどの笑顔でたずねる。
「”怒らないから言ってごらん”、なにをいいかけた?」
絶対に信じちゃいけないワードを口走るクウヤに、ツヴァイは引きつった笑みのまま首を真横に振る。
「俺は”今は忙しい”から”また後で”食うよ」するとその横から悪びれた様子もなく、不自然さを感じさせることなく信用してはいけないワードを2連発で言い放ち、団長であるヴィトリアルがそそくさと逃げ出そうとする。
「あ、待て!」
すでにノブに手をかけて出て行こうとするヴィトリアルに、アーリィが水を得たりと追従しようとするが、クウヤがマフィンを持って後を追いかける。
イヴを傷つけないためにどうしても食わせるつもりだったらしい。
部屋に残ったツヴァイとイヴそしてエディは黙っていたが、何か行動を起こさなければ気まずくてしょうがない。
完全にしょんぼりしたイヴの盆に、エディは決心したように腕を伸ばした。
ただ道ずれがほしかったので、ツヴァイにもその真っ黒マフィンを無理やり持たせる。
「ツヴァイも、ほら。”別に死ぬわけじゃないんだから”、”一生のお願い!”」
蒼白そうな顔をしているツヴァイに、彼がいつも妙な薬品を薦めるときの口癖を言ってやると、しぶしぶ頷く。
「君もだいぶ信用しちゃいけないワードを使いこなせるようになったね・・・同じ盗賊団として誇らしいよ・・・」
そう愚痴を言いながら、解毒薬のような液体が入ったフラスコ片手に、ツヴァイがそれじゃあ、とマフィンを持ち上げる。
「いただきます」二人同時にソレを口の中に一気に放り込んで目を閉じる。苦さを隠してオーバーなリアクションをしなければ、イヴは喜んでくれるはず・・・そう思って苦味を待っていると、代わりに甘さがやってくる。
チョコレートのような味ではない、どちらかというとふつうのプレーン味であった。
「おいしい・・・焦げてるように真っ黒なのにおいしい」
そう驚きでつぶやくと、イヴが照れながらにっこり笑った。
「黒い着色料が厨房にあったから、黒いマフィン面白いかなと思って入れてみたの・・・エディのメイドさんの味には負けるかもしれないけど、喜んでもらえてよかった」
そういって朗らかに笑った彼女は、今頃この部屋を出て行った三人が本気モードの鬼ごっこを繰り広げていることをさほど気にしていないようなので、エディも気にしないことにした。
あれ、なんだろう次から次へとカオスなものしか生まれないぞなんだこれw
黒い着色料があるかは不明ですが、きっとケーキを真っ青にしちゃう着色料と夢の国アメリカにならあるだろうと願う