複雑・ファジー小説

Re: さぁ 正義はどっち ? 参照四桁ありがとうございます! ( No.156 )
日時: 2013/08/11 10:30
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: aTTiVxvD)

四桁記念 番外編003 執事採用試験
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「つぎ」
優雅にティータイムを楽しんでいたミルフィーユは、その紅茶の香りだけ嗅ぐと、一口も飲まずにティーカップを机において言った。
そ、そんなぁとしょんぼりした様子で、執事服に身を包んだ青年がとぼとぼとミルフィーユのいる部屋から出て行く。
すると今度はその青年と入れ違いになって新たな執事服を着た人物が歩み寄ってくる。
ぺこりと頭を下げて言う執事姿の人物達は、これで2309人目だ。
「採用候補2309番、よろしくお願い致します」
「うん」
ミルフィーユは疲れたように伸びをすると、ティーカップを差し出して言う。
「おいしい紅茶を淹れること、これが第一試験だよ」

資産家で美食家で発明家の彼は、最近狂ったように発明品を手がけている。朝から晩、そして徹夜をしまくり、つい先日寝不足と栄養失調で倒れたことをきっかけに世話をしてくれるものがほしくなったのだ。
ただ単なる執事など彼にとっていらない存在だったので試験をし、その中で自分にぴったりの逸材を採用しようとしていたのだが・・・どうやら2309人目のコイツも単なる執事らしい。
毎日飲んでいては飽きるような単調でふつうの味の紅茶の香りを嗅ぐと、ミルフィーユは2309人目も追い返した。
どこかに逸材はいないだろうか、どいつもこいつも正統派執事すぎる、と半ば願うように背もたれに寄りかかっていると、こちらにやってきたのは小柄なシルエット。
小さな十代前半の少年で、ふんわりした印象の小さな子供がおずおずとミルフィーユの座る丸テーブルまでやってくる。
最初迷子が迷い込んだのかと思ったが、どうやら違うらしい。小さいながら執事服を身にまとっている少年は、頭を下げて言った。
「執事候補2310番、よ、よろしくお願い致します!」
2310番は類を見ないほどに最年少での参加であり、執事というよりは親戚の子供、もしくは孫といった感じがする。そんな子供が一体何を考えて執事採用試験に立候補したのか分からず眉をひそめていると、いつの間にか紅茶を淹れ終わっていたらしい。
ティーカップからおいしそうな香りがし、89人ぶりにミルフィーユはソレを飲み干す。
「第一試験は合格として・・・紅茶が淹れられるということはそれなりに執事の仕事はこなせるだろう。しかし、私が求めているのはここから先第二試験からだ」
言いながら、ミルフィーユは作りかけの発明品をテーブルの上に置いた。自分でもいろいろ組み合わせているだけなので、一体何を作ろうとしているのか不明だが、とりあえずソレは完成したらわかることだ。
一体これで何するんだろうと不安そうな顔をした2310番に、ミルフィーユは工具一式とネジやら歯車を握らせて、陽気そうに言った。
「なんかやってみなさい!」
「えっ・・・何かって・・・これは一体・・・」
「私にも何を作っているのだかさっぱり理解不能だが、完成すればいずれ何を作っていたかわかるはずだと思うから、今はこれがなんなのか気にすることは無い」
むちゃくちゃだがあっているような発言に、そのまま理解できないと帰っていくものもいたが、多くの執事がとりあえず作業をしていった。
2310番も同じで、おそるおそるネジを差し込んだり歯車を取り付け始めた。
そしてしばらく経つと、2310番が部品を引っこ抜いた途端にボンッとくぐもった音と共に機械が黒煙を吐き出す。その直後機械がぼろぼろと崩れ、ネジや歯車板などのガラクタの海が出来る。
「あぁあ・・・壊しちゃった・・・どうしようどうしよう」
ラグの涙ぐんだ悲鳴に、ミルフィーユはまぁそんなことしょっちゅうだと笑いながら肩をたたくが、壊れた機械の部品の海に、ミルフィーユが取り付けた小さな薄い布を発見し、驚きで目を丸くする。
その布切れには、爆発の衝撃で目を真ん丸くする2310番の少年が白黒だが写りこんでいたのである。
油絵で書いたようなものではなく、姿そのまま実体がそこに映しこまれたような不思議なもの。
後にカメラとなるものをラグは完成させたらしい。
その発明力にミルフィーユは感動して、壊れた機械目の前に大泣きする2310番目の執事候補、ラグを採用したのだった。

一体どうしてカメラが完成できたのか、壊れた部品を何度くみ上げてもソレは完成せずただ爆発するのみ。
だがミルフィーユとラグは諦めず、毎朝はやく起きて二人の記念発明品であるカメラを再び作り上げようとしている。
おそらく世界で初めてのカメラによる撮影品、ラグの驚いた顔の写真は発明室の壁に、今日も大切に掛かっている。


執事採用試験編です!ラグ君のミルフィーユが気遣うほどの泣き虫らへんが最後までやっぱりうまく出せませんでしたが・・・許してくださいw

これでルークが果物ナイフ片手にドアを蹴破った際、ミルフィーユとラグが一体何を作っていたかはっきりしましたね!
いつの時代からカメラがあったかは、覚えていないうえに、この時代のカメラは撮影に3時間ほどかかるというが・・・ラグの作りあげたカメラはかなり高性能のものだったということで