複雑・ファジー小説
- Re: さぁ 正義はどっち ? 参照四桁ありがとうございます! ( No.162 )
- 日時: 2013/08/12 15:32
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: aTTiVxvD)
四桁記念 番外編007 ある幻術師の思い出
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カメルリング王国とミカイロウィッチ帝国の狭間にある鉱山。そこには珍しい鉱石や宝石が取れるだけでなく、敵国を襲撃する際に篭城するととても戦いやすいことから、両者そこを奪い合っていた。
現在は数年前の大戦により両者とも痛手を負い、冷戦と称して戦力補充を行っている。
その大戦が終わって間もない頃、その人気の無い鉱山に子供をつれた一人の男がやってくる。
先の戦いにより体中傷だらけで、包帯をいたるところに巻いている為ミイラのような風貌になっているこの男は、鉱山のてっぺんで足を止めた。
そしてここは安全だと悟ると、包帯で隠れていない顔の横半分で優しく微笑む。右目と頬に傷があり、右目は失明していた為包帯で右目ごとぐるぐると巻いていた。
本来柔和そうな風貌の優男だったが、包帯でぐるぐ巻きだと人々に恐れられてしまうので黒色の重々しいフードを深くかぶっていたが、今は人目はない。あるといえばあるのだが、弟子達はいつも通り接してくる。
「師匠・・・ケガ、まだ痛むの?」
三人の弟子の内一人、若草色の髪を白いリボンで結わえた小さな少女が気遣わしげにこちらを見上げる。
イヴという少女で、口数は少ないが優しい子だ。
そのほかにも、イヴの兄である翡翠色の髪のクウヤ、薄紫色の髪をした少年シランも怯えたような顔で傍によってくる。
彼らは戦争にこそ参加させなかったものの、街の崩落の様子や悲鳴、師匠の包帯ぐるぐるっぷりを見れば怯えるのが道理だろう。
まだイヴは11、クウヤとシランは13歳なのだ。
その怯えた三人を安心させようと、まだ痛むがやせ我慢して微笑む。
「・・・大丈夫だよ、ありがとう」
この鉱山には正式な名前が無い。帝国と王国どちらの所有物でもないためお互いの国からさまざまな名前で呼ばれるが、大勢がこれだという名前が無いのだ。
強いて言うなら帝国の鉱山、王国の鉱山、など所有権を誇張した呼び方が多い。
この鉱山は硬い針葉樹林の樹海で取り囲まれており、めったなことでは人は来ない。
それは幻術の修行にはありがたいシチュエーションだった。
まだ一人前ではないこの三人幻術師の卵があちらこちらで幻術を扱うので、半人前の彼らの幻術でも巻き込まれたら危険である。
特に彼らの習得しようとしている星の幻術は危険度が高く、これをマスターしているのは彼らの師である包帯ぐるぐる男、ソーサラーだけだった。
ソーサラーは本名ではなく”運命を引く者”という占星術の最高位に与えられる相称であり、星座を組み込んだ幻術を編み出し幻術師としても名をはせた。そのおかげで三人の愛弟子に会えたのだが、その代償として戦争に引きずり出される事になってしまった。
星の幻術はその威力がすごいことから戦争に引きずり出されることは多く、このままでは愛弟子達にも魔の手が伸びるとここまで逃げてきたのだ。だがいずれこの怪我では捕まってしまうだろう。
ソーサラーは悲しげに目を伏せた。
すみません、シラン君の年齢修正しました
11→13