複雑・ファジー小説

Re: さぁ 正義はどっち ? 参照四桁ありがとうございます! ( No.164 )
日時: 2013/08/12 14:13
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: aTTiVxvD)

四桁記念 番外編008 ある幻術師の思い出
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「師匠ー地の部屋、第2室、第6室、第10室マスターしたぜ!」
近場の岩に座り込んで暗い顔をしていたソーサラーに、クウヤが駆け寄ってくる。
その手の中にある13歳には大きすぎる剣は彼の両親が与えたものらしい。イヴの槍もシランの剣もそうだという。
まだ十代半ばの子供になんてものプレゼントするんだといつも思うが、そんな子供に危険な術を手取り足取り教えている自分が言えたものではない。
「だからさ、早く風の3つの部屋教えてよ!イヴもシランも俺が守ってやるんだから、あの二人より強くなんないといけないし!」
もとより飲み込みの早いクウヤは張り切って目を輝かせている。
「焦らないで、基礎の火の3部屋はきちんと出来ているのかい?風の部屋からの幻術は危険度が上がるから慎重にね」

ソーサラーの星座を取り込んだ幻術には12の部屋と呼ばれる幻術がある。火・地・風・水の順に危険度が増して行き、ひとつに三つの部屋がある。その部屋というのが、幻術のことだ。
イヴとシランは基礎の火の部屋をマスターし、地の部屋の修行中であり、クウヤが火と地とをマスターしたという。

岩からゆっくり下りながら、ソーサラーは自ら被実体となるためにクウヤの目の前に立つ。
「それじゃまず基礎の火の部屋3つ、そして地の部屋3つをやってごらん」
岩に寄りかかりながらそういうと、クウヤがためらう素振りを見せながら剣を振り上げた。
「 アリエス レオ サギッタリアス 」
その掛け声と共に、ソーサラーの視界が真っ黒に塗りつくされる。
まず火の第一室”外観・自我を奪う”幻術が作動し、自らの体が人の物ではなくなりぐにゃりと変形していく。
何も知らない人々は悲鳴を上げパニックになるだろう、だが発案者のソーサラーは弟子の精進に微笑みながら受け流す。
続いて火の第5室”悦楽を与え惑わす”、第9室”永遠と彷徨わせ自由を奪う”が終わる。
まだあたりが暗闇のまま、クウヤの更なる声が響く。
「 タウルス ウィルゴ カプリコルン 」
地の部屋が現れすぐ消えていく。第二室”金銀財宝”により、辺りが金ぴかの状態が10秒も持たずに消え、第六室”強制労働”により身に付けていた衣服や荷物の重量が莫大に大きくなる。
だがクウヤの集中力の問題で、それらもすぐに消える。
地の最後の一室である第十室”野望”の部屋により、ふつうの人々は自らの野望がかない、この部屋の虜になって出られなくなる。
その部屋も数秒ほどで霧のように散ってしまった。

黒い視界が消えて目の前に剣によりかかるように座りこんだクウヤがいた。金色の瞳で不安そうにこちらを見ている。幻術は持続が命であるといっても過言ではないのだ、途中で集中力を途切れさせると幻術はすべて消えてなくなってしまう。
よって集中力が長く持たなかったことにより、怒られたり失望されたりするのを恐れているようだ。
ソーサラーが口を開くと、意を決したように意志の強そうな瞳でこちらを見てくる。その宝石のような翡翠色の髪を撫でてやり、しょうがないなと笑う。
「六つの部屋を一応使うことができるようになったようだね。だけど風の部屋は火と地よりも集中力を使うから、教えられるのは明日、風の一部屋だけだよ」
もし王国か帝国の追っ手が来たとしても、風の一室が使えたら逃げることが出来るだろう。
よっしゃ!と目を輝かせたクウヤは喜ぶが、風の3部屋は火・地に比べてかなりひどい術である。精神が崩壊するレベルのものを教え込んでしまうことに若干後ろ髪を引かれつつ、教えられるものはすぐにでも教えないとまずい状況が腹立たしかった。


修行時代のお話と、今まで出てこなかった幻術についてさらりと書かれた物語です
分かりづらいと思うので、最後に幻術のまとめと補足説明を書き足しますのでご安心を!
とりあえず今は、火・地・風・水の順で危険レベルが上がるということだけが分かっていれば多分平気です