複雑・ファジー小説

Re: さぁ 正義はどっち ? 参照四桁ありがとうございます! ( No.187 )
日時: 2013/08/15 19:16
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: aTTiVxvD)

018 ミカイロウィッチ帝国ルート


「ここから王都には本来三日間歩かなければなら無いが、近道するぞ」
近道?と小首を傾げたエディに、ゼルフが明らかに道とはいえない崖を指差す。
「樹海付近の崖下を下ると、危険な代わりに王都まで約一日早く着くことができる。食料をほぼ持たない我々は丘へと続く道ではなく崖を下る道を進むぞ」
むしろ道じゃありません!単なる九十度の壁です!と叫びたくなるのをこらえてエディはうなだれる。
中間達が何も文句を言わず、むしろ当たり前というような顔をして崖の方へ歩いていくのをみて、もう何も言うことはない。
ただシフォンが折角の金糸の軍服が台無しだとこぼしていたが、命の心配はしないらしい。

夜の崖下りはかなり厳しいものであり、エディは何度も死にそうになった。幸いなことに弓使いのエディは握力と腕力があり、岩にしがみついていることが出来るが、高所の恐怖を甘く見てはいけない。
足元を見ると深淵に落ちるような感覚が常にし、むしろ自分は岩にしがみつきながら落下しているのではないかと思い始めてしまう。

ただ誰も死なずに崖下に到着すると、また休みもせずに歩き続ける。
朝日が昇り、日が天に架かり、そして日が沈む。
もう倒れるかと思った頃に、深い森を抜けて野原の先に見える長い長い砦が見えた。
石造りの王都を守護するその砦には、兵士たちがハルバートを構えて年中無休で監視している。
「どうやって入るんですか・・・」
ぜいぜい体力面が瀕死状態のエディが尋ねると、ケロリとしている中間達が答える。
「アレ聞いてなかったのか?エドウィンが一人で王都に入り、王都にいる仲間と合流して、俺達を手引きするんだぞ?」
ちゃっちゃといって来いよ、と指図するヴィトリアルに、エディは目を見開く。まったく持ってそんな話聞いてない。
「とにかく、王都内でライヤという人物を探せ。これをもっていけばすぐ会えると思うぞ」
言いながらヴィトリアルが赤いバンダナを外し、エディの弓にくくりつけた。
「それじゃがんばれよ!」
「いってらっしゃいエディー」
「・・・・・・行ってきます」
能天気な彼らの見送りに、エディはしぶしぶ頷いて一人城門へと歩いていく。

異常なくらいずたぼろの少女が城門前にやってくると、ハルバートを持つ兵士たちがざわめく。
諦めきったエディはとりあえず力なく肩を落として言う。もはや演技ではない。
「旅のものとはぐれて・・・崖から落ちて・・・道に迷って、やっとたどりついたんです。王都に知り合いがいてくれたらいいんですけど」
それはそれはおいたわしい、と兵士たちはぼろぼろのエディをすぐに保護してくれた。
地方のお嬢さんが旅のものとはぐれて一人生き残ったとか言う、そんなイメージがついたのだろう。
エディの服はぼろぼろの割りにそれなりに上等だったので、疑うものはいなかった。

そうしてまんまと王都に一人飛び込んだエディは、兵士にお礼を言ってとりあえず目に付いた店の戸をあけた。
もちろんそこはルークも足を踏み入れた<シュタイン亭>である。