複雑・ファジー小説

Re: さぁ 正義はどっち ? 参照四桁ありがとうございます! ( No.191 )
日時: 2013/08/16 22:29
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: aTTiVxvD)

019 ミカイロウィッチ帝国ルート


「あらいらっしゃい」
カウンターに並ぶ大男達と談笑していた女将さんが入り口に立つエディに声をかけて驚いたように目を丸くする。
こな時間帯に子供がここに来たこと、そしてソレが傷だらけの少女だったからだろう、カウンターから出てきてエディを心配そうに覗き込んだ。
「大丈夫、お譲ちゃん?どうしたの?こんな時間帯に一人で・・・」
カウンターまでいざなわれて椅子に座らせられると、ココアを出して貰った。
携帯食料だじゃ物足りなかったエディは、喜んでソレをご馳走になった。
夢中になってココアを啜るエディに、その空腹具合にただ事ではないと女将さんはカウンターに片肘を突いてしげしげとエディを見つめる。
大男達も片手にビールジョッキを持ちながら、エディをじろじろ観察する。
「嬢ちゃん、家出というよりは誘拐犯から逃げてきたって感じだな。何があったんだい?」
「この時間帯に一人で歩いてくるガキが最近多いなぁ。まぁ嬢ちゃんはあの果物ナイフ小僧と違って立派な弓を背負ってるが・・・」
「何があったか話してくれるかしら?」
大男達を横目に、女将さんがココアを飲み干して満足げに目を閉じたエディに話しかける。
エディはココアをくれた女将さんに頷くと、話し出す。

「—…ということなんです。そこですでに王都にいるライヤさんを探しているんですけど、ご存知ありませんか?」
郊外にある館から旅仲間と共に一緒に王都を目指していたが、はぐれて道に迷い、ひとり王都にたどり着いた。
知り合いのもとに旅仲間がいるかもしれないからライヤという人物を探している。
そんな話をすると、女将さんを含むシュタイン亭の中にいる人々はすぐ信じてくれた。
そしてすぐ女将さんや大男達がざわりと何か知っている様で声を上げ始める。
「ライヤって、あいつのことかな—?」「いや、絶対違うだろ!多分この嬢ちゃんの知り合いは貴族風のヤツじゃないか?」
「ライヤねぇ・・・確か常連客にそんな男がいたよ。だけどお嬢ちゃんと知り合いには見えないねぇ!」
腕を組んでエディの身なりを見てあいつは違うといわれるその人は、一体どんな人なのだろう?エディはとにかく王都の砦外で待機している仲間のために、否定する彼らに頼み込む。
「・・・と、とにかく、その人なんでもいいので会わせてくれませんか?」
エディが頼み込むと、女将さんは困ったように渋っていたが、観念した様で酒を飲んでいる大男達にライヤという男を捜してくるように言いつけた。

女将さんの一声で大男達は三十分後、一人の若い青年を連れてきた。
黒い髪の、マントつきの黒い服を着たその人は、何事かと目を丸くしていた。
「つれてきたぜ嬢ちゃーん!こいつがライヤってやつだ。知り合いじゃないだろ?」
ライヤというその青年を指差しながら、大男達は笑う。
ライヤは目の前のエディを目を丸くして眺め、目をしばたいている。
この人がヴィトリアルの言うすでに偵察に行っている仲間なのかどうかわからないが、エディは背負っていた弓からヴィトリアルのバンダナを外して手で握り締める。
「ああ、あの・・・」盗賊団の仲間ですか?ヴィトリアル団長の手下さんですか?などと口には出せないが為、なんと声をかけようか迷う。
仲間だったらいいが、仲間でなかったら疑いの目で見られてしまう。
おどおどしていると、ライヤが紅色のバンダナを見て口元に笑みを浮かべた。
そして親しげにエディの肩に手を置いてなれなれしく微笑んだ。
「よう、元気にしてたかエリー!」
「え」
固まったエディは訳がわからず思考が止まるが、ライヤは女将さんにわざわざ彼女の居場所を教えてくれてありがとうな!などとお礼を言う。
あっけに取られるのはエディだけではなく、むしろシュタイン亭のすべての人が目を真ん丸くしている。
「知り合いなのか?良家のお嬢ちゃんと・・・?」
信じられないという顔で大男が尋ねると、ライヤはそうだけど?と悪びれた様子も無く嘘を吐く。
「エリーとはずっと前から知り合いだよ、この紅いバンダナは仲間だって言う証拠だから、ね」
思わせぶりな視線と、その言葉に、エディははっとしてバンダナを握り締めて頷いた。
「! そう、そうです!この人が探していたライヤさんですよ!」
間違いない、バンダナが仲間の証、ということはヴィトリアル団長の事を知っており、団長の傘下にいる仲間だということだろう。
意外そうな人々の視線を受けて、ライヤはエディの腕を引いて宿から連れ出した。
心配そうな人々の声や視線が背中に突き刺さるが、エディはそのままライヤについていった。