複雑・ファジー小説
- Re: さぁ 正義はどっち ?【オリキャラ募集】 ( No.20 )
- 日時: 2013/08/01 13:15
- 名前: メルマーク (ID: TM72TTmK)
003 カメルリング王国ルート
酒場は近くで見ると結構大きく、木製の建物だった。
二階建ての屋根からぶら下がる看板には、『シュタイン亭』と書かれている。分厚い木の扉越しに、酒場の騒ぎ声やいい香りが漂ってきて、ルークは意を決して扉を押し開けた。
呼び鈴が鳴り、酒場の喧騒が一瞬小さくなった。カウンターに向かっていた常連客らしき大男達も、カウンターに立つこの料亭の女将さんもルークを振り返る。
「あ、あの・・・」自分の登場であたりが静まり返ったため、ルークは緊張しながらも女将さんに尋ねる。
小粋な服に身を包む女将さんは30代に入ったばかりと言った顔立ちをしている、大柄で陽気そうな、典型的な姉後肌タイプの人だった。
「まだ店やってますか?」
「あら、お客さんね!さぁさぁ入って頂戴、まだまだ営業中よ」
女将さんが指し示すカウンター席に座ると、大柄な男に囲まれるような構図になり、ちょっと居心地が悪い。
悪い人じゃないんだろうけど、ムダに筋肉質で強面だ。
「さて、こんな子供が遅い時間にどうしたの?親と喧嘩して家出でもした?」
女将さんがさっそく料理をしながら、ルークにたずねた。
手元を見ずにこちらを見つめて話してくるあたり、プロだ。
強面の男達も興味津々そうに、酒のジョッキを片手にルークを眺める。
「こんな外見だけど僕は16歳ですよ。騎士になりたくて郊外から旅してきたんです」
「へぇ、郊外から!」と驚きの声が上がり、見掛けによらずタフだの、大男達が誉めそやす。郊外から王都まで行くには、何日間か歩き続けなければならない。馬車もあるが、彼らは悪徳商法でかなりの値段をふんだくるのだ。一般人は歩くのが妥当だ。
「おまけに騎士志望だってさ、じゃあ明日は王宮に行くんだね?」
頷いたルークの眼前に、ことんと皿が置かれる。
ここの定番料理なのだろう、スープと羊肉がおかれ、空腹のルークはすぐに飛びついた。
しばらくして再びドアが開閉される鈴の音が鳴り響いた、が、ジャリンと再びつぶれた音が響く。
「あ、すまない女将さん、やっちゃった」と声が響き、カウンターに男が座り込んだ。
ルークの横に据わったその人は、深い海のような立派な服装で、物腰の柔らかすぎる少し頼りない印象の男性。豪奢な金髪で、服よりも深い青の目をしていた。その手には呼び鈴が握られており、落下の衝撃で変形していた。
「こんばんはミルフィーユさん、まぁ、その鈴も古いし、しょうがないわ。変え時ね」
腰に手を当てて笑う女将さんに謝るミルフィーユの手から、ルークは鈴を取り上げ、ベルトから果物ナイフを取り出す。
ルークはあっけにとられる人々の中で数分後、ナイフの柄で鈴の表面をたたき、元の形状に戻した。
「これで、だいじょうぶじゃないかな」とナイフを置いて鈴を鳴らすと、チリンと軽やかな音が鳴る。
「あら、すごいわね!ありがとうボウヤ!」
女将さんがうれしそうに呼び鈴を入り口に取りつける間、ミルフィーユという人物は、ちょっと感心したようにルークを眺めて言った。
「驚いたね、こんな小さい子供のくせに。丁度良かった、路頭に迷ってそうだし、弟子がほしかったんだ」
「で、弟子?」ルークが目を丸くしていると、ミルフィーユはルークの小さな肩をたたきながら軽やかに笑った。
「私は美食家にして資産家で、発明家のミルフィーユだ。採用決定だよろしくな少年!」ははははっと笑うミルフィーユをとめられるものはいなかった。
ミルフィーユさん暴走キャラになってしまいましたが、発明家ってやっぱりいいですね!今後活躍しそうです!