複雑・ファジー小説

Re: さぁ 正義はどっち ? 参照四桁ありがとうございます! ( No.203 )
日時: 2013/08/18 18:26
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: aTTiVxvD)

024 カメルリング王国ルート


「・・・」フランベルジュの傍に腰掛けていたルークは誰かがやってくる気配を感じて、立ち上がる。
薄暗い礼拝堂の入り口から軽快な足音が聞こえてくる。
ぎゅいっと何かを引き絞る音がして、ルークは誰がやってきたのか理解した。
弓矢を引き絞り歩いてくる彼女は水色の目の、先ほどの似非シスターだった。
彼女はルークの傍の台座に突き刺さるぼろぼろの剣を見て首を傾げていたが、気を取り直してルークに言う。
「そのナイフが一体なんなのか・・・教えてはくれないんでしょ?」
何かを覚悟したような彼女の声に、ルークは頷いた。
どうやら彼女はこの修道院に潜入し、何かを探っているらしいということは勘付いていた。
何でもいい、何か一つでも多く情報を集めよとしている彼女に、魔法剣について教えるのは良くない。
「あなたは何者なんですか?情報を集める工作員か何か・・・?」
ルークは水色の目の彼女が何か言う前に、先に口を開いた。
少しでも敵の情報を得るために、何か相手に喋らせる必要がある。
「非好戦的なフランチェスカ王女のいる修道院を襲うなんて・・・いったいなんで?何が目的なんだ?」
質問攻めにすると、水色の目の少女は弓矢を構えなおす。ルークの言葉に耳を貸さず、振り払うように言った。
「あたしの質問に答えないなら・・・そのナイフを—」
奪う、と、か細くつぶやいた彼女は思いっきり矢を放った。
薄暗い礼拝室で矢が見えるわけも無く、ルークは彼女が矢を放ったことがわかると慌ててベルトから果物ナイフを引き抜いた。
だがソレで矢をはじけるわけも無く、振り回す前に矢はルークに到達する。
水色の目の少女が放った矢はルークの太ももに突き刺さり、だが手加減したのか貫通しない程度だった。
「うっ」
だが痛いのに変わりはなく、ルークはその場に倒れこむ。ナイフを片手に握り締め、小さくうめき声をもらす。
そなルークの元へ、おずおずと歩いてくる水色の目の少女。見上げると、怯えたように弓を両手でつかんでいる。
ルークを見て、彼女は口を開いた。
「き、急所じゃないから・・・死ぬことは無いけど・・・死んだりはしないと思うけど・・・」
そしてごめんなさいといいながらルークの手の中にある果物ナイフをとろうとする。
そこでルークは果物ナイフを強く握り、彼女に体当たりした。
近距離攻撃なら弓よりも断然短剣であるナイフの方が有利である。
うわっと体当たりされてしりもちをつく彼女に飛び掛り、ナイフを掲げるが、刺すのがためらわれる。
同年代風の女の子をいくら急所じゃないからといって刺すのはルークには出来ず、柄で目をつぶりながら彼女の腹部を殴った。
短い悲鳴の後、少女がぐったりと横たわり、冷たい床にごろりと寝転がった。
ごうやら捕虜を手に入れられたとほっとするが、心配になって声をかける。「し、しんでないよ、な?」
肩をゆすると、突然彼女が目を開けてルークに飛び掛ってきた。
「うわ、気絶してない?」とルークが目を丸くしていると、少女はルークの身体を膝で踏みつけて、その右手につかまれた果物ナイフを無理やり奪おうとしながら叫ぶ。「あんな痛い峰打ちで気絶なんてできるわけないでしょ!気絶した振り!」
彼女に馬乗りされた挙句、必死に握っていた果物ナイフが弾き飛ばされて床をくるくると滑っていく。
「あ」と声を上げる間に、水色の目の少女が走ってナイフを取り、弓矢を拾い上げると脱兎の如く逃げていく。
「待て・・・」魔法剣を奪われて慌てて追いかけようとするが、太ももに矢が突き刺さっており痛くて動けない。
絶望的な気分でその背中を見るしか出来なかった。