複雑・ファジー小説
- Re: さぁ 正義はどっち ? 参照四桁ありがとうございます! ( No.204 )
- 日時: 2013/08/18 21:24
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: aTTiVxvD)
025 カメルリング王国ルート
逃げて行く彼女を目で追うと、突然駆け込んできた人影が、少女の前に飛び出してきた。
黒い二つのシルエットが双方驚いたように一時停止した後、少女よりも早く謎の影が動いた。
敵か味方か皆目検討もつかなかったが、その謎の影は少女とは仲間ではないらしく、影が少女につかみかかるのが見えた。
(何やってるんだあの人たち?)
太ももの痛みに顔をしかめながら、ルークはよろりと立ち上がる。何かに寄りかかって歩きたいが、あいにくとそんなものは何も所持していない。
そのまま立ってよろよろゾンビのように二人に近づいていくと、謎の影に突き飛ばされて少女がルークにぶち当たる。
突き飛ばされて仰向けに転がるルークと、即座に立ちなおった少女。ルークはしりもちをつきながら、二人を見上げる。
少女は弓を鈍器代わりに構えており、対するもう一人は少女から奪い取ったナイフと真っ黒い本を抱えていた。
その男に、ルークは見覚えがあり、しりもちをついた状態から思わず声を上げた。
「ユニートさん!」
ユニートはルークを一瞥し、それからナイフを奪い返そうと踊りかかってくる少女を避けて、魔道書を開く。
相変わらず何を言っているかわからないその詠唱により、突如黒い本からゆらゆらと炎が立ち上る。
それにユニートがなにやら命令すると、炎の塊が少女めがけて突進する。
きゃあっと悲鳴を上げて弓を振る彼女だったが、その弓の先がこげ、弦がじりじりと焼かれると、慌ててユニートから飛び退る。
少女はユニートに挑もうか迷う素振りを見せるが、仕方なくその場から走り去る。
その後姿をじいっと冷めた目でねめつけていたユニートは、煙を手で払うような仕草で、本から飛び出した炎の玉をけした。
「一体何が起こってるんだか?」とつぶやきながらユニートはしゃがみこんでルークを助け起こし、果物ナイフを手渡した。
お礼を言ったルークに、ユニートはフランベルジュのほうへ歩き出しながらたずねる。
「一体何が起こってるんだ?先ほど駆けつけてきたばかりだから良くわからないんだよね。修道院に賊が侵入したって知らせをシスターたちに聞いて、王国の兵士たちと一緒に来たんだ」
ルークは王国の者たちが来てくれたならもう大丈夫か、と安堵しながら知っていることを洗いざらい話した。
修道院に賊が侵入し、王女を襲ったらしいということ、そのうちの一人がルークの持つ魔法剣に興味を持ってしつこく追いかけてきたこと。だがフランベルジュに見向きもしないことから、魔法剣の存在を知らないらしいということ。
ふぅんと頷きながら聞いていたユニートは、フランベルジュの台座にルークを座らせると、相槌を打ちながら真顔でルークの太ももに刺さった弓矢を引っこ抜く。
「うぎゃっ!?何するんですかユニートさん!」
目を丸くして出血しだした太ももを抱え痛みに顔をゆがませるルークに、ユニートは魔道書を開きながら喋りだした。
「僕も曲りなりに魔導師なんだから、保護補助治癒くらいはちゃんと使えるんだよ」
魔道書が開かれ、ルークは間近でその内容を見ることが出来た。ただ、不思議な記号だらけで、読むことが出来ない。きっと魔法を使う者たちの呪詛を理解できないのと同じように、この本の内容も理解できないのだろう。
『 』とユニートが口を動かしているのだが、その呪詛は理解することも覚えることも出来ない。ただ、包まれるような柔らかな光が悲惨な傷口をじわじわと治していく。
数分ほどで傷口が閉じ、ルークは感嘆した。
「まぁ使えると言っても、小さな怪我程度を治す『 』くらいだけどね。『 』や『 』『 』なんかは、リグ僧侶の方がうまく使えるだろうし、早く治すことができると思うよ」
「・・・はぁ、ともかく、ありがとうございます」
額の汗をぬぐったユニートに、呪詛が聞き取れなかったルークは目をしばたくものの、お礼を言った。
そして消えた傷口をしきりにこすりながら、メガネをかけなおすユニートに尋ねる。
「フランチェスカ王女のところに、もう王国兵士たちは着いたんでしょうか?僕たちはフランベルジュを守っていたほうがいいですよね?」
「そうだね、フランベルジュを守っていたほうがいいと思うよ。フランチェスカ様はまぁ・・・一人でも大丈夫だと思う」
ルークとユニートは。フランベルジュの台座に腰掛けたまま、賊が早く捕まることを祈っていた。
幻術の規則とならぶ魔術の定理を説明したくてたまらない!
『 』は言わずともがな、呪文です