複雑・ファジー小説
- Re: さぁ 正義はどっち ? 参照四桁ありがとうございます! ( No.207 )
- 日時: 2013/08/19 17:52
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: aTTiVxvD)
021 ミカイロウィッチ帝国ルート
睡魔、飢餓、疲労の三つが襲い掛かってくる中、エディは一人修道院の中を歩いていた。
盗賊団+騎士は無事修道院の中に潜入することが出来、アーリィ・ゼルフ・シフォンは王女の部屋へと向かい、エディは一人王女以外に魔術を使えるものがいるかどうか調べるために、単独行動を取っていた。
ヴィトリアルとライヤは修道院の外で待機しており、すべての任務が終わった後中間達の脱出ルートを確保するらしい。
「魔術が使えるかどうかなんてどうやって確認すればいいんだろ?こんな真夜中に誰かいるのかな?」
エディはブツブツつぶやきながら、動きにくそうに中庭を目指す。ドレスの上から修道服を着ているので、若干動きにくい。
武器も取り出しにくいので、戦闘が始まったらすぐ逃げるつもりだった。
美しい修道院の中心部、庭園の草を踏みながら進んでいると突然背後から声をかけてくる人物がいた。
「そこのシスターさん、どうしたの?そっち夜は危ないよ」声に驚いてぎくりとしたエディは近寄ってきたその人を見上げ、更に驚いた。
こんな時間帯に人がいること自体驚いたのだが、声をかけてきた人物が昨晩の包丁少年にそっくりだったため、さらに驚いてしまった。
思わず包丁少年!と叫ぶと、その人は首を傾げていた。
灰髪と黒い瞳とそのベルトに刺さった果物ナイフ。昨夜の少年より背が高いところを除けば、そっくりだ。
ソレは僕の弟じゃないかな、どうやって一日でここまで来たの等果物ナイフの男は言っていたが、エディは正直言って聞いていなかった。
どうやって相手が魔術を使えるものか断定できるのか、ずっと考えていたのだ。
すると突然天をも引き裂くような轟音がとどろき、真っ青の閃光が修道院を染め上げる。
「なんだ!?」と果物ナイフの男も轟音に目を見開き、エディと同じ反応をする。
あれが王女の放っている魔術だとは信じられず唖然としていると、もっと信じられないものが目に飛び込んできた。
目の前にいる男のベルトにささる果物ナイフが、青紫の光を放っているのだ。先ほどまで確か月光を浴びて銀色に光っていたのに、ナイフ自体が自ら光っている。
(あれって絶対魔術関連だ・・・)そう思ってあっけにとられていると、その男が急にその果物ナイフを抜いて走りだした。
「あ、待って!」
慌てて引きとめようとするが、一向に止まる気配が無い。そこでエディは弓を取り出し、男の足元めがけて矢を放つ。
あのナイフがなんなのかわからないが、王女と戦っている仲間に悪影響を与えるかもしれない。
そして魔術関連主であることは確かであり、エディにはソレの正体を知る必要があった。
矢が足元に突き刺さると、果物ナイフ男は立ち止まった。
振り返るその男に、エディは弓矢を構えながら尋ねる。あまりこういった脅しをかける様な事は好きではないが、仕方が無い。
「あなたそれ、なに?何でそんな光ってるの?」とたずねると、男は黙って首を振る。
それを”教えない”ととらえたエディはむっとする。脅しをかけても口を開かないとなると、この男はエディと戦っても構わないといっているようなものだ。的相手になら好成績を収めるエディだが、人や生き物に矢を放ったことはない。
勝てる気がしない。
男が何かこちらに言ってきているが、動揺していたエディはすべてを聞き流す。
ただ最後の帝国の手先?という言葉が聞こえて、慌てて表情を引き締めて振り払うように叫ぶ。
思い切りすごんで「そのナイフがなんなのか教えなさいよ!」
といったつもりだが、その男も頑固に「イヤです」と言い張る。
そのままにらみ合い、もう本気で撃ってやろうかと思った瞬間、再び凄まじい落雷の音が鳴り響き、建物全体が大きく揺れた。エディも男もバランスを崩し、両手を床に着く。
しゃがみこんだエディは前方を見て思わず「あっ」と声を上げた。男が立ち上がると、逃げるように建物内へ駆けて行く。
「こらまて!果物ナイフ男!」
慌ててエディも立ち上がり、その男の後を追いかけて建物の中を走った。