複雑・ファジー小説
- Re: さぁ 正義はどっち ? 参照四桁ありがとうございます! ( No.208 )
- 日時: 2013/08/19 20:06
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: aTTiVxvD)
022 ミカイロウィッチ帝国ルート
エディはしばらく男の後を追いかけていたが、建物内に入るなり修道士達やシスターたちの慌てふためく集団に飲み込まれて、男を見失ってしまった。
「王家に連絡を!」そういいながら通り過ぎていく修道士やシスターたちを抜けて、エディは辺りを見回す。
あの果物ナイフ男はいず、完璧に見失ってしまったようだ。
「フランチェスカ様のところへ賊が進入したようです!」「剣を持った男二人と小さな少女だそうだ!皆修道士になりすましていたらしい」「まだ仲間がいるかもしれないぞ」
そういった声に耳を澄ませていたエディは武器を所持しているが為疑われかねない。何も収穫が無いまま逃げるのは悔しかったが、王宮へと走る修道士達にまぎれて脱出することにした。
院内を走っていると、窓の外に蛍のような光がちらりと見え、エディは足を止めた。
紫色の光は修道院の中心部へと漂っていく。
あれも魔術関連の類かもしれないと、エディはためらいながらその光を追う。
紫色の光を追ってたどりついたのは修道院の中心部、広く開けた礼拝堂だった。天井から真っ白い大きな十字架がさがり、その下に一筋の光を受けて台座が照らされている。
実に神々しい光景だったが、その台座のそばに座っていた何者かが立ち上がった。一筋の光に照らされて、その人物が先ほどの果物ナイフ男だということがわかると、エディは弓矢を構えて歩き出す。
追い詰めた今、弓での先制攻撃はとても有利だ。薄暗いこともあり、戦うならば今だろう。
「そのナイフが一体なんなのか・・・教えてはくれないんでしょ?」
覚悟したようにエディがたずねると、男は頷く。なぜか台座の傍に刺さっている棒のようなものを守るように立っており、エディは怪訝な顔をする。
すると男が口を開いた。
「あなたは何者なんですか?情報を集める工作員か何か・・・?」
戦うことを決意すると妙に落ち着き、エディは今度こそ男の言葉を聞き逃さずに理解した。
その男は額に汗を浮かばせながら、少しでも情報が欲しいのか、エディに喋らせようと質問攻めにしてくる。
「非好戦的なフランチェスカ王女のいる修道院を襲うなんて・・・いったいなんで?何が目的なんだ?」
果物ナイフ男の言葉は最もだったが、エディは答えるわけには行かない。弓を引き絞りながら男の言葉をさえぎる。
「あたしの質問に答えないなら・・・そのナイフを——奪う」
強奪なんてしたくなかったが、エディは意を決して矢を思いっきり放った。
矢が放たれたことに気付いた男は慌ててベルトからナイフを抜くが、その太ももに矢が突き刺さる。
手加減したおかげで貫通はしなかったが、男はうめきながら倒れこんだ。はじめて人を傷つけた感覚に青ざめながら、エディはよろよろと男に近寄る。痛そうに顔をゆがめる男に、エディは恐る恐るつぶやく。
「き、急所じゃないから・・・死ぬことは無いけど・・・死んだりはしないと思うけど・・・」
ごめんなさいとつぶやいて、エディは男のつかむ果物ナイフに手を伸ばした。紫色のぼうっと輝くそのナイフは見るからにふつうではない。
息を呑んでソレに触れようつぃた瞬間、急に身体に衝撃が走り、しりもちを着いた。
視界に果物ナイフ男が移りこみ、そいつに体当たりされたことに気付く。反撃しようとする前に、男がナイフを掲げて、目をつぶりながら振り下ろしてくる。
腹部に衝撃が走り、小さな悲鳴を上げてうずくまると男が慌てた様子で肩を揺らしてきた。
「し、しんでないよ、な?」とおどおどした声が聞こえる。
一体この男が何がしたいのか良くわからないが、エディは男に飛び掛った。
「うわっ 気絶してない?」と男が仰天したように床に転がり、その身体を膝で踏みつけるようにのしかかりながら、エディは腹を立てて叫び返す。「あんな痛い峰打ちで気絶なんてできるわけないでしょ!気絶した振り!」
そして思いっきり男がつかむ果物ナイフをはたいて、取り落とさせた。
床をくるくると滑っていく果物ナイフは、男の手から離れると光を失ったが、エディは構わずソレを拾い上げて修道院から逃げ出そうと脱兎の如く走った。
「待て・・・」と男が立ち上がろうとしてうめく声が背後から聞こえてくるがエディはもちろん止まらない。
不思議なナイフを奪えたのだから、もうエディの仕事は終わりのはずだ。あとは修道士達にまぎれて脱出するだけ—だがふいに礼拝堂入り口から紫色のフロックコートを着た男が駆け込んできた。