複雑・ファジー小説

Re: さぁ 正義はどっち ? 参照四桁ありがとうございます! ( No.212 )
日時: 2013/08/20 18:47
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: aTTiVxvD)

025 ミカイロウィッチ帝国ルート


銀髪をゆるく三つ編みにしている男の言葉に、アーリィは恐ろしいほどの笑みを浮かべて振り向いた。
誰もが幼女のそれでない笑みを見て後ずさるのだが、アーリィを挑発した銀髪の男は笑みをたたえている。
銀髪の男を一瞥したアーリィは、男に向き直り、口元を吊り上げた。
「ふーん、そこまで言うなら……覚悟は出来てるんだろうねぇ?」
「おや、恐いですね。世界が終わってしまいそうな予感がします」
アーリィの語尾が、かわいらしい幼女の声から世にも恐ろしい声へと変貌するのだが、銀髪の男はメイスを構えながらにっこり微笑む。
おいバカ挑発するな、とその場にいた誰もが思ったとき、アーリィがさっとピンクの杖をふりあげる。
『 ヴァレーヒ  ヴァスティン 』
その口から呪詛が飛び交うと、あたりがぐらぐらとゆれる。猛烈にいやな予感がして、エディとゼルフ、シフォンは慌ててその場から走り去る。その予感は正しかったようで、ふいに地面から噴出すように火柱がいくつも上がった。
「うわぁ!?」「ここは聖域だぞ?!」「死にたくないっ」
その火柱を見て修道士やシスターたちは悲鳴を上げて逃げる。だがその炎は空中でひとつにまとまり、ぐるぐると巨大な炎の竜巻を創りあげ、逃げ惑う人々を追いかけていく。
だがアーリィの唱えた呪詛はまだ一番目しか出現しておらず、『 ヴァスティン 』により地面を市松模様に炎がほとばしる。
ゆれる炎にあわせて煙と黒い影が踊り、ふいに炎が鎌首をもたげて牙を剥く蛇と化した。
 ソレを見上げた銀髪の男は黒いメイスを振り上げて炎を振り払うように叫ぶ。
音が一瞬聞こえなくなり、それから鼓動のような音と共に衝撃波が銀髪の男を中心に放たれる。
その衝撃波により皆が倒れるか身動きが取れなくなり、修道院の壁が嫌な音を立てる。
人や建物にも衝撃を与えながら、炎が激しく揺らぎ、密集した巨大な火が消える。ろうそくの炎を息で吹き消すのと同じ原理である。
だがアーリィは焦らず、杖で大きく輪を描くと、『 ヴァスフレイド 』と声高らかに叫んだ。
もはや味方も敵も関係ないというより、完全に忘れ去られてしまったようである。命からがら修道院の外へ駆け出したエディ達は唖然として攻防を見守っていた。
「相変わらず何を唱えてるのか聞き取れないが、あれが呪詛とか言うやつなんだな」
ゼルフが黒い剣を握りなおしながら、彼らを見つめて言う。
「普通の者には聞き取れない、それが魔術とか言うものですからね。味方にいれば便利なことは確かだ。危うく殺されかけましたが、ね」
ゼルフの言葉にシフォンが腰に手を当てながら、青い瞳を細める。
「え、アーリィさんの叫んでる呪文みたいなのって普通の人には聞こえないんですか?」
エディは魔術師対決を見守っていたが、二人の言葉に驚いて聞き返す。
先ほどからエディは、ユニートとアーリィの唱える呪詛だけは聞き取ることが出来ていた。
ただなぜか、アーリィと戦っている銀髪の魔術師の呪詛は聞き取れないでいた。
困惑するようなエディに、ゼルフが頷きながらつぶやく。
「魔術って言うのは先天的なもので、特異体質というものだからな。訓練したところで魔術が使えるよにはなれない。聞き取れないからって落ち込むことはない、奴らがおかしいんだ」
「そ、そうなんですか・・・?」
エディは口をつぐみ、自分がその呪詛を一部だけ理解できることについては黙っていた。アーリィが帰ってきたら、こっそり聞いてみようと思っていたのだが、あの戦いはいつ終わるのだろうか?