複雑・ファジー小説

Re: さぁ 正義はどっち ? 参照四桁ありがとうございます! ( No.217 )
日時: 2013/08/22 18:00
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: vXApQJMC)

027 カメルリング王国ルート



「何が起こったんだ?」
ぐらぐらとゆれ続ける礼拝堂で地面に這い蹲りながら、ユニートが情報を求めて辺りを見回す。
「だ、誰か来ますよ?」ルークはゆれる視界の中で、礼拝堂の入り口からこちらにかけてくる足音を聞きつけてユニートにうろたえた声で呼びかける。
「誰ですかあの人?」じっとみていると、その人物の姿がだんだん見えてくる。
象牙のように白い鎧兜に、白銀の剣。それらが亀裂の入った建物から光を受けて、救世主のような印象をかもし出している。まぁ、敵でなければ、だが。
するとユニートが慌てて立ち上がって叫んだ。
「ラルス、何でここに?国王の護衛は!」
「その国王の命令で、王女の護衛に来たんだ」
その白い鎧の騎士は、揺れにふらつきながらもフランベルジュのもとにやってきた。
味方の騎士?と首を傾げていたルークだったが、ラルスがフランベルジュを抜き取ろうとしているのに気付いて声をかける。
「フランベルジュを何処に持っていくつもりですか?」
「なんだこの子供は・・・?」
ルークとラルスは二歳しか離れていないのだが、ルークの童顔のせいでかなり幼く見られたためか、ラルスが戸惑ったような顔をしてユニートを見た。
だがユニートはソレに答えず、訳がわからないという顔をしながらラルスを見た。
「王女の護衛を頼まれたなら王女はどこだ?フランベルジュは必要ないだろう?」
ラルスは台座からすらりとフランベルジュを抜き取ると、ソレを大切そうに構えながら頷いた。
「国王の命令で、この修道院は破壊されるそうだ」


破壊?!とキリエは思わず大声を出してしまった。
隣で力なく座り込んだ王女も、ビックリして目を見開いている。
ここは王女の部屋。王女の魔力でぼろぼろになった部屋で、逃げた賊を追いかけて去ったリグ僧侶と入れ違いに、ラルスがやってきたのだ。
「そうだ。国王様より、そう命令が下った。なのでフランチェスカ様、キリエ殿、直ちに王城へ避難していただきたい」
そう二人に告げたのは、援軍によって王女の元へ駆けつけてきた王国の名誉ある白騎士ラルス。
王女の御前なので兜を取っており、干し草色の髪と目元があらわになっている。
実力のある騎士であり、正義感の強い心優しい彼から告げられた非情な知らせに、王女が悲痛な声を上げる。
「待ってください、逃げた賊を追ってリグ僧侶様が!リグ僧侶様がいないのですし、修道士様たちや、神を祭る祭壇が・・・すべて壊すおつもりですか?」
その言葉に、ラルスは顔をゆがめてうなだれる。ラルス自身不本意なのだろうが、国王には逆らうことが出来ない。
「お父様はなんてことを・・・お兄様は反対すらしなかったのですか?!」
「フランチェスカ様の兄上様はもちろん反対なさりましたが・・・王の元に届いた情報を知り、最終的には賛成と・・・」
「情報?」とキリエがたずねると、ラルスは深く頷いた。
「密偵の報告によりますと、今回王女様を狙った賊は、帝国の差し金、ということらしいのです。それで彼らを帝国に逃がさないため、この修道院の爆破を利用して始末、生きていたなら捕獲する、と王は言っておりました」
帝国に情報を漏らせば戦争に負ける確率が高くなる、それならば主導院を破壊して彼らを始末し、少ない被害で抑えよう。
ソレが国王の判断であり、もうじき爆破されるというのだ。
「わかりました・・・ですが、リグ僧侶様や修道士様、発明家のお客様たちを絶対に救ってください!」


「—ということでな、王女様とキリエ牧師はすでに脱出した。お前たちも早く脱出しろ。俺は避難を促しがてら、貴重な魔法剣を回収しに来たんだ。これは少年、お前が持って逃げろ」
ラルスがむき出しの刀身で手を切らないようにと常時装備の包帯でぐるぐる巻きにしてからルークに放り投げた。
だがルークの指が柄に触れた瞬間、バチバチと火花が散って刀身を覆う包帯が燃え上がる。
「な、なんだ!?」とラルスが仰天してルークから後ずさり、ユニートはやれやれといったように無言でルークからフランベルジュを奪い取る。
ルークの指から離れると、嘘のように火花が消え、焼け焦げた包帯が足元に散らばる。
ぼろぼろの剣になったフランベルジュをルークの服越しに背中に縛り付けたユニートは、ルークを追いやるように出口へ突き飛ばした。
転びかけたルークと唖然としているラルスの視線を受けて、ユニートは出口へと小走りになりながら向かい、口を開いた。
「ルーク君はフランベルジュを持って逃げる。僕とラルスはまだ避難していない人を救助して逃げる。早くしないと、修道院もろとも爆破されるよ」