複雑・ファジー小説

Re: さぁ 正義はどっち ? 参照四桁ありがとうございます! ( No.224 )
日時: 2013/08/23 14:22
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: vXApQJMC)

030 カメルリング王国ルート


僕を殴り殺すつもりなのか—ぼけっとしりもちを着いたままルークは、黒い剣の鞘を振り上げた男を見上げていた。
片手で握り締めたナイフがバチバチと音をたて、その表面に付着した血液がはぜる。
黒い鞘の影がルークの顔を覆うと、条件反射のようにルークは背中に手を伸ばした。
すばやく手を伸ばし、背中にくくりつけられたフランベルジュを思いっきり鞘にたたきつける。
バヂィっと凄まじい音がし、フランベルジュが黒剣の鞘を受け止め、その黒塗りの鞘に焼印のように傷跡を残す。

ルークがフランベルジュを抜くと、黒剣の男は鞘を放り投げ警戒したようにルークから距離をとった。
そしてゆっくり立ち上がるルークの持つフランベルジュを観察し、その威力のほどをじっくり見定めている様だった。
「魔法剣が二つ・・・」
どちらも貰おうかな、というような響きを含んだ男の言葉にルークは反応せず、フランベルジュを持つ手で頬についた血を拭い取った。

「・・・・・・・」
黙ったままルークは後ずさり、瓦礫の山にうずくまる少女ををみた。
少女は痙攣しながらも何とか立ち上がろうとしており、忌々しげにルークを見ていた。
すると瓦礫の向こうから少女の横にすばやく駆け上がってきた人物が小脇に幼女を抱えて額の血をぬぐって立っていた。
(魔女の女の子とシフォンとかいう・・・)
リグ僧侶と戦っていた幼い魔女をどうやったかわからないが回収してきたシフォンは額を少し切ったらしく、血が流れていた。
うんざりといった様子で任務遂行してきたシフォンは幼い魔女を降ろし、代わりにポニーテールの少女を抱え、瓦礫から飛び降りた。
「早く撤収しますよ!そんな少年放って置きなさい」
華麗に着地したシフォンは後方の魔女と黒剣の男に怒鳴ると、駆け抜けていこうとする。

「待て!」
折角捕虜ができたと思ったのに逃げられたらたまらない、とルークは少女を抱えたシフォンに飛び掛る。
だがルークの剣フランベルジュを黒剣の男が軽々と受け止め、力ではじき返した。
突き飛ばされるように後方へかろうじて着地したルークは、自分がぜんぜん剣を扱えないことに腹を立てていた。
棒切れを振り回すように切りかかっても、黒剣の男は蟲でも払うかのようにやすやすと受け止めてしまう。

目の前を悠々と通過していくシフォンと、忌々しそうだが仕方ないと走り去る小さな魔女。
兵士たちやラルス、リグ僧侶が後を追いかけようと騒がしい怒号の声が聞こえてくる。
それに気を取られていたルークに黒剣の男が切りかかり、慌てて棒のように掲げたフランベルジュでガードしたルークの足を払い、転ばせる。
仰向けに転がったルークの腹部に剣の柄で打撃を与えた男は、うめくルークをそのまま攫おうと襟首をつかんだ。