複雑・ファジー小説
- Re: さぁ 正義はどっち ? 参照二千記念のアンケート実施! ( No.254 )
- 日時: 2013/08/28 15:42
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: V8vi7l6T)
参照二千記念 番外編014 とあるメイドの追走劇
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帽子屋・小道具店・宝飾店・靴屋・生地屋・・・リンはあれから立ち並ぶ、店を覗いては去り、覗いては去りと繰り返しているのだが、エディを見つけることは出来ないでいた。
ドレスに関係がある店をすべてまわり終えたリンは、店先で頭を抱えていた。
「どうしよう・・・まさか本当に誘拐・・・?仕立て屋の主人の言ったことってまさか本当の—」
あわあわと辺りを不安そうに眺めていたリンの目に、ふとあるシルエットが写りこむ。
なんだか白の・・・体の大きさにあっていないような白衣を引きずりながら歩く、少年。
リンははっと我に帰って、目を見開いた。
脳裏にすばやく仕立て屋主人の呟きが、再生される。
『怪我をした人や病気の人を無償で手当するとかなんとか言って拉致しようとする、白衣を着た妙な少年が出没するとか…』
蒼白になりながら、リンはその白衣少年を追って人ごみに飛び込んだ。
その頃エディはというと、浜辺に寝転がって気持ちよさそうに寝ていた。どこからどう見ても良家のお嬢様には見えず、健康体と一目でわかるため、誘拐されるいわれが無い。
今頃リンが血相を変えて誘拐犯らしき人物を追っているなどと、夢にも思わないエディは、まったく目を覚ます気配が無かった。
「あれ、見失った!?」
メイド服のポケットに片手を突っ込みながら、リンは辺りを必死に見回していた。
隠れた片手にマインゴーシュ(短剣)を握り締め、必要あらば戦う準備をしていた。
リンはシュナイテッター家に仕える、唯一の戦うメイドである。メイド兼シュナイテッター家の番犬になっている。
「あんな目立つ人なのに・・・」
不安がっていると、ふと裏道へと消えていく人が目に止まった。
白い白衣をなびかせて、何かを重そうに抱えて狭い路地へ吸い込まれていったあの人は・・・
リンは短剣を握る指に力を込めて、その路地に駆け込んだ。
「うーん・・・」
太陽が丁度真上にやってきたことでエディはまぶしさに起きた。
出発したときも昼だったのだが、今は真昼もいいところ、寝るにはまぶしすぎる。
上半身だけ起こして辺りを見るけれど、リンはいない。
少しだけ不安になったエディだったが、うーんと伸びをするともう一度寝転がる。
「リンはまだかなぁ・・・でも、ドレスの仕立ての事になると嬉しそうだし、まぁいっか」
お気楽脳天気の彼女はリンを信頼しきっているが為、のびのびと寝転がり続ける。
「ヨットにでも乗ってこようかなぁ。このまま海にダイブするのも良さそうだなぁ」
エディは波打ち際に座り込むと素足になり、足首まで打ち寄せる波に洗われながら人差し指で砂に絵を描き始めた。
もちろんモデルは大自然の母である、海とそこに浮かぶ船、海鳥だった。
再び白衣少年を見失ったリンは、入り組んだ道に見入っていた。
もともとミカイロウィッチはカメルリングと比べると、平地ではない。
切り立った崖から関数グラフのようにカーブを描いて浜辺へとなる不思議な地形をしている。
そのおかげで、崖の急斜面に暮らす人々の家は急な階段やほぼ直角の家々と細かく隣接している。
アマルフィと呼ばれるここは、白を基調としたかなり芸術的な町だった。シュナイテッター家は比較的海に近く平らな土地に住んでいるが為、リンはこの風景にあまりなじみが無く、驚いていた。
ちなみに、海の傍に住む人々の階級は低く、王宮を中心にぐるりと取り巻く崖の住人は高貴な身分が多い。
馬車などはソフトクリームのようにゆるく円を描くタイルの道があるため、高所に住む人々は徒労を強制されることは無いのだ。
「絶対エディお嬢様を連れてきたら喜ぶ・・・」
そうつぶやいたリンの足に、何か毛ダルマのようなものが擦り寄ってきた。
「! ネコですか!」
ナイフを取り出してしまったリンは、慌ててそれを仕舞うとネコを抱き上げる。
真っ白のそのネコの瞳は、青色と黄色。白猫ではこのような目は珍しくない。けれどどこか神秘的である。
そのネコは人懐っこく抱き上げたリンの手に額を擦り付けて甘えてくる。
「なんと可愛らしい・・・芸術的ですね・・・お嬢様が見たら—」
ふとそこで、誰かの視線を感じて前方へ眼をやる。
すると同じように青色と黄色の瞳が不思議そうにこちらを見ていた。ただ唯一違うのは、それが人間で、リンの抱く白猫のように白い白衣を着た少年だということだろう。
「リンってば本当に何しているのかな?迷子にでもなったのかな?」
砂浜5メートル四方に壮大な海の絵を描きなぐっていたエディはそれが完成してしまうと、やっと立ち上がった。
そろそろお腹がすいてきたし、何か食べようかなとエディは市場をうろうろするために立ち上がった。
どうしてこう、番外編はカオスになるんだろう?
リンさんのドジッコとエディの呑気加減が書きたかっただけなのに、なぜ追加属性でカオスが付属されるんだっ