複雑・ファジー小説

Re: さぁ 正義はどっち ? 参照2000ありがとう御座います! ( No.263 )
日時: 2013/08/29 15:42
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: V8vi7l6T)

参照二千記念 番外編017 傭兵の黒と従者の白
—————————————————————————


夜間でしかも待ち伏せの戦闘をひかえると、いつもうとうとしてくる。ゼルフは岩に寄りかかり腕を組んで目をつぶっていた。傍には黒い剣が突き刺さっており、夜霧のせいで少し濡れている。
その剣に隔てられたゼルフのすぐ横に、銀髪の少年と緑色の髪の少女が
うずくまるように眠っている。ゆっくりと眠りの底へといざなわれるゼルフの耳に、足音がひとつ、ふたつみっつ・・・とりあえず沢山聞こえてきた。
「おい、ジョレス、ミレア、起きろ」
その足音を捕らえたゼルフは傭兵仲間に声をかけ、地面に突き刺さった黒い剣をすらりと抜き取って構える。
中間達が起き上がるのを横目で見つめながら、霧の向こうに揺らめく複数の黒い影に微笑む。
「奴らがやっと来たぞ」


その一週間前—・・・・
現在は帝国と王国との大戦が終了してから二年後、両国復興が進む中盗賊たちの活動も多い。
まだ齢16になりたてのゼルフは、盗賊から雇い主を守る用心棒になり金稼ぎをする輩に混じって、傭兵になろうとしていた。
「傭兵は名声を得ないとやっていけないんだ」
「盗賊を殺すのか?」
ゼルフの言葉に、机にあごを乗せて伏せていたジョレスが、少し不安そうな顔をしてゼルフを見上げた。
銀色の髪の間から緑色の瞳が覗く、クールそうな凛々しい風貌の少年だが、実はロリコンという残念なスキルを所持している。
「私たちが生きていくためには、そうするしかないでしょ!」
そのジョレスを見つめながら、腰に手を当てて強気に言うのはミレア。流れるような緑色のストレート、母なる大地の茶色の瞳を持つ男勝りだが仲間思いの彼女は、ゼルフ同様大戦で両親を亡くした。
ミレア・ゼルフが16歳で共に両親が無いのに対して、ジョレスは15歳、両親はかろうじて戦火を免れていた。

現在三人は傭兵として雇われるために、どうやって名声を得ようとミカイロウィッチ帝国の宿屋で相談していた。
あまり持ち合わせは無いのだが、それでも少しずつ樹海で暴れている動物の駆除をやって稼いだお金である。
「帝国と王国、どっちで盗賊狩りをするんだ、ゼルフ?」
「王国だ。王国と帝国どちらも又にかけて襲う盗賊集団がいて、そいつらが指名手配されているのをたまたま聞いた。そいつらを倒せば、すぐに俺達の名前は知れ渡ると思うぞ」
ゼルフは両手を組みながら椅子の背もたれに寄りかかり、自分の黒い剣を眺める。
するとミレアがテーブルに両手を置いて、茶色の目を少し怒らせて反応した。
「私もその盗賊団の事は聞いた。やっと復興してきた矢先に貴族を襲うならまだしも民家を襲うなんて!」
ミレアは正義感が強く、そして戦争で家族を一気に失ったため、もてあそぶように無害な人々の命を奪う輩が許せないのだ。
何か強い決意を湛えた茶色の目を光らせて、ミレアが椅子から勢い欲立ち上がる。
あっけに取られたように眺めるゼルフとジョレスの目の前で、彼女はやる気満々といった様子で宣言する。
「よし、そいつらを潰しに行きましょ!」


あの人とあの人の遭遇です!
ある意味アノ人とコノ人も遭遇します!