複雑・ファジー小説

Re: さぁ 正義はどっち ? 参照2000ありがとう御座います! ( No.269 )
日時: 2013/08/30 18:06
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: V8vi7l6T)

参照二千記念 番外編019 傭兵の黒と従者の白
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まずい、この角度から斬り付けられたら重症どころじゃない。
そう思うのだが、ただサーベルを凪ぐ男と腰に帯刀したレイピアをベルトから引き抜かなくてはならないミレアには、圧倒的なタイムラグがあった。
 もう駄目だと感じたとき、サーベルの男がにやりと笑って何かをつぶやく。もうおわりだ、とか何かそんなことをつぶやいたのだと思う。
その瞬間、その男のサーベルを持つ腕が思い切り、切り落とされ、ぎょっと男が目を見開く。そしてその男の背中から胸にかけてをもうひとつの剣が刺し貫き、今度こそ男が息絶えた。

「ジョレス・・・」
歯を食いしばって剣を構えたジョレスがそこにおり、ミレアが声をかけるとそのままへたり込んで、沈黙した。
ミレアもゼルフもジョレスに声はかけず、そのまま遺体をひとつにまとめる作業を続けた。
はじめて人を屠った時、その人は脱力感と逃避感、喪失感に襲われる。
これは武器を取る者の登竜門、一人で乗り越えなくてはならない。

数分かかってやっと戦闘不能者をロバの転がす荷台に乗せ、彼らは王国へと出発した。
会話はなく、戦闘による披露で三人とも眠かったということもあるが、人を殺した後なんとなく和気藹々と会話する気が起きなかったのだ。
霧も晴れてきたころ、朝日が昇りかける冷たい朝。
会話もなく進んでいると、突然ゼルフが足を止めた。
「・・・?」
首をかしげるジョレスとミレアは、ゼルフが黒い剣を構えるとおどろいたように身動きを止めた。
だがもっと驚いたことは、突然気配もなく誰かがゼルフに飛び掛ってきたことだった。
剣と剣がこすれる音。
白い塊がゼルフにはじかれて剣を構えながら着地した。
そこでようやく飛び掛ってきた白い塊が、白い簡素な防具を身に付けた男だとわかる。
「騎士・・・?」
「いや・・・あれは騎士の従者の格好だと思うけど・・・」
ミレアがレイピアを構えながらつぶやくと、まだ暗そうな声でジョレスが答える。
ミレアはゼルフとにらみ合うその青年を睨みながら、心底腹立たちそうにつぶやいた。
「見習い騎士が私たちになんで襲いかかって来るのよ・・・?」

騎士になるには三つの道がある。
ひとつは貴族の家に生まれること。貴族はたしなみ程度に騎士の称号を得ることができ、腕は関係なく騎士になることが出来る。
二つ目は傭兵となって名をはせること。確かな腕が認められると騎士の称号が与えられ、騎士になることが出来る。
そして三つ目が、騎士に弟子としてつくことだ。
騎士の従者となり、剣の道を教えてもらい、一人前になったことを認めてもらったら騎士となることが出来る。

「この野盗が・・・ッ」
そうはき捨てるようにつぶやいた白い防具の青年、ラルスは白銀の剣で目の前の野盗を切り捨てようと意気込む。
数日前、ラルスの剣の師である騎士の住まうカメルリング王国の民家を、とある盗賊グループが襲った。
彼らの全財産だけでなく、人畜無害な人々の命までも奪った盗賊団を始末しようと、ラルスは剣の師の許しを得てここまで追いかけてきた。
その際師から、白銀の剣を貰い、野盗を始末することで一人前の騎士として認めたやろうといわれていた。
(俺と同い年くらいのヤツが、まさか犯人だとは・・・)
剣の柄を握り締めて、ラルスは恨めしそうに三人をにらむ。
少し人数が少ないのではないかと思ったが、仲間内で口減らしをしたのではないだろうか?
温厚な人々を殺した奴らだ、そのくらいはしてもおかしくない。
相手は三人だが、ラルスは負ける気がしなかった。


題名のお二方の遭遇!