複雑・ファジー小説

Re: さぁ 正義はどっち ? 参照2000ありがとう御座います! ( No.272 )
日時: 2013/08/31 15:05
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: V8vi7l6T)

くそーくそー!
2222見逃したぁ・・・

参照二千記念 番外編020 傭兵の黒と従者の白
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目の前で金属が激しくぶつかる音が響けば、重たい手ごたえが手首に衝撃を与える。
コイツは一体誰なんだ?
剣を受け止めはじき返し、斬りかかっては防御される。鋭い目つきを更に鋭くし、ゼルフは目の前の白い従者を見ていた。
あまりにも手ごたえのあるヤツなので、なぜ従者の格好をした見習い騎士が襲い掛かってくるのか、などということはどうでも良く、ただ自分が気の済むまで戦いたく思っていた。
強い剣士と戦うこと—それがゼルフの願いであり、本能の叫びだった。


ゼルフの父親はしがない剣士であり、ゼルフの母親となる女性とであってからは、剣の代わりに商具を手に取った。
父親が手放した黒い剣は、ゼルフが遊び道具として小さい頃から興味心身で触っており、父親はゼルフに言葉を教えるように剣を教えていった。
そのおかげで12歳ほどになると、黒い剣を担いで一人旅をしても安心して見送れるような剣豪に成長していった。
もっと強い人と、もっと強い人を—と、そう望んでいたゼルフは剣の道を極め行くため、黒い剣を引きずってあちこちに旅に出た。
狩りができず食料調達で死にそうになったことは何度かあったが、それでも剣で死にそうになった事はなかった。
それから丸2年、強い人を捜し求めて旅していたゼルフは、自分が旅に出てから一年後に帝国と王国とが大戦を開始していた事を知る。
急いで帰った故郷には、両親はいず、戦火をくぐって生き残った人に話を聞くと、すでに故人になっていると言う。
齢14で家族を失ったゼルフは、遺体が無造作に埋められた共同墓地で呆然と立ち尽くし、今や形見となった唯一の自分の持ち物を握り締め、自分にできることを考えた。
悲しみと憎悪に洗われて、純粋な少年の心が行き着く答え。
やはりその答えは、強くなって、戦争を引き起こし両親を戦に巻き込んだ相手を始末すること—だった。

ゼルフと従者が無我夢中で切りあっている中、ミレアとジョレスは完全に蚊帳の外であり、だがとめることができなかった。
そもそも襲われる理由がわからず、腹を立てるばかりのミレアとは反対に、ジョレスはまだ落ち込んでいた。
ロバの額に片手をかけながら、思考が停止したようにじーっと戦う二人を見ている。
「あぁ、もう!アンタもいつまでもボーっとしてないで、戦うわよ!」
そんなジョレスに蹴りを入れながらミレアがレイピアで戦う二人を示す。
指揮棒のように振り回されたレイピアの先を眺めていたジョレスは、蹴りを入れられてようやく我に帰ったようだった。
慌てたように双剣を構えて、ミレアの後についていく。
そんな二人の足音に気付いたのか、ゼルフと白従者がぱっとはなれ、互いに距離をとった。
白従者が視線をめぐらせて油断も隙もなさそうな気配を放ち、三人の一挙手一投足に目を光らせている。
数が増えたからと言って、逃げ出すような輩ではないらしい。
そもそもゼルフと互角の剣士に、数が増えたからと言って油断していいわけではない。
「何で従者が私たちを襲うの?」
ミレアが緊張したようにレイピアを構えながらたずねると、白従者は心底心外そうな顔をしてから、憎憎しげに剣を大きく横一線に凪ぐ。
そして鼻先でそれをかわした三人に、白従者は覚悟しろとでもい言うかのように飛び掛り、叫ぶ。
「よくもそんなことを言えたものだな!この野盗ども!」

「ちょっとまて、俺達は—うわ」
白従者の叫びにジョレスが否定しようと言い返すが、白銀の剣がわき腹をこすりそうになり、慌てて剣でガードする。
だがガードした剣ごと身体が後方へはじかれて、ジョレスはそのまま高く飛び、かろうじて着地する。
双剣は切れ味が良いが、両手で剣を交互に使用するため、使用者の負担を無くすためにかなり軽く出来ている。
そのためガードすると体ごと後方へ弾き飛ばされることが多々あるのだが、これほどまで遠くへ放り出されたのは初めてだと、ジョレスは唖然としていた。
だがその衝撃が人を殺してしまったと言う嫌な感覚を一時的に消し去ったおかげで、自然と足が動き、剣を振り上げて走ることが出来た。

ジョレスが切りかかり、ミレアが突き、ゼルフが凪ぐ。
三人のコンビネーションにより、白従者は少しずつ苦戦を強いられており、間合いを取ろうと後退していく。
弱くない人だったが、数には勝てない。そして神経をすり減らしすぎたのか、とあるミスをした。
剣を大きく凪ぎすぎ、腹部に大きな隙が出来た。
ゼルフが目を細め、もう終わりかというつまらなそうな顔をし、黒い剣できりつけようと構える。
だが突然ゼルフを押しのけてミレアがその腹部に強烈な蹴りをいれた。
腹部に防具をつけていなかった白従者はそのまま後ろへ転がり、その指からするりと白銀の剣が滑り落ちた。


ミレアさん蹴りばっか入れてるけど優しい子だよ!?