複雑・ファジー小説
- Re: さぁ 正義はどっち ? 参照2000ありがとう御座います! ( No.281 )
- 日時: 2013/09/01 22:42
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: V8vi7l6T)
参照二千記念 番外編023 傭兵の黒と従者の白
————————————————————————
「仕方ないですね、俺が師匠にあなた方のことを話してちゃんと名声を得られるようにしてもらいます」
ラルスは困ったように3人にそう告げると、城のスロープを駆け上がって消えた。
やることがなくそこに突っ立ったままでいた三人の前で、ふいにロバが暴れだした。
ガゴンと音を立ててロバの後ろ蹴りを喰らった荷車から戦闘不能の盗賊たちと財産が転がり落ち、ロバはそのまま鎖が取れて走り去る。
それだけならまだしも、今がチャンスだとかろうじて動ける盗賊たちが脱走を図りだした。
「あ、こら待て!」
「ジョレスはロバを追いかけろ、盗賊は俺達が追う」
一番ロバに近かったジョレスにそう指図すると、ゼルフは逃げ惑う盗賊団の生き残りを追いかけて走る。
ミレアが盗賊団の一人の襟首をつかんで引き倒した光景を尻目に、ジョレスはロバを追って走り出した。
ゼルフやミレアに任せれば、盗賊団はすぐ捕まえられるだろうなぁなどと考えながらロバを追っていくと、徐々にあたりの景色が変わる。
穏やかな辺鄙な場所へと変わり、木々や花の植えられた道が続いていく。
ロバが爆走しようが、幸いなことに人気がないため怪我人は出なかった。だがのうのうと走らせていいわけではない。
四足歩行に二足歩行が追いつくわけがないが、運がいいことにロバは疲れたのかスピードを落としたため、ジョレスは数分後無事にロバを捕らえることに成功した。
ンガーと言うような、ロバの奇妙な鳴き声にわかったから黙れよ、と相槌を打ちながらジョレスは辺りを見回す。
「なんだあれ・・・古代遺跡?」
のどかな景色の向こう、ひときわ目立つ白皙の建物に目を奪われたジョレスは引き寄せられるようにその建物へと歩み寄っていく。
手綱は軽く握る程度だったが、ロバは大人しくジョレスと並歩してその建物へたどりついた。
白くて美しい・・・神殿のような建物。
異様なほどの美しさに、ジョレスは口を半開きにしたまま緑色の目を丸くした。
カメルリング城が曇りの似合う建築物なら、この神殿は秋晴れと寂しげな風の似合う建築物だ。
時を忘れるほど美しい光景に心奪われていると、ンガー、と不意にロバが何かに気付いたように鳴きはじめ、神殿から誰かがこちらをひょっこり覗いているのが目に留まった。
薄茶色の髪に空色の宝石のついた髪飾りをつけた、幼い少女。彼女が恐る恐ると言った感じでジョレスを見つめ、口を開いた。
神殿から10メートルほど離れていたが、神殿の入り口のいる少女の声がはっきりと聞き取れた。
「あの・・・どうかいたしました?道に迷われたのでしょうか?」
「え、あ・・・建物を見ているだけで—」神殿に人が住んでいたことに驚き、挙動不審になったジョレスは無言でこちらを見つめる少女に慌てて弁解する。
「べ、別に怪しいものとかそんなんじゃ—」
「ロバですね?触ってもよろしいでしょうか?」
だがそんなことに興味がまったくないらしく、海のように深い瞳を輝かせてたずねてきた。
変な子だなぁ?と思いながらも幼い子好きなジョレスは頷いて、それを了承してやる。
「ありがとう御座います!」
「ッ!」
心底嬉しそうに微笑んで駆け寄ってくる少女の顔を見た瞬間、一目で心を奪われた。
遠目では別になんともない普通の少女の気がしたが、間近で見てしまうと天使のような子供だった。
神殿と同じ純白の長いスカートの背に、白い羽根がついていたら完璧だったのに。
「これがロバですね、初めて触りましたが、ごわごわしていらっしゃるのですね。何を食べるのですか?」
「あ・・・わら・・・とか?」
もとよりロリコン属性のジョレスはかなり取り乱しながらも彼女の質問に答える。
かなり棒読みの答えに、彼女は変な顔せず更に感激したようにロバを撫で回す。
その愛くるしい様を見て、ジョレスは更に取り乱し、素数を数えることも忘れた。
(え?この子人間?俺はロバを追跡中に実は死んでいたのか?これはお迎えか?俺の好みにあわせて神様がこの天使を迎えに来させたのか?)
「お嬢ちゃんって、ここに住んでるのか?」
かろうじて出てきた言葉はこれだけであったが、彼女は微笑んで頷く。
「今日からここに住むのです。引っ越してきたばかりで、まだ知り合いもいません」
ここでじゃあ俺が知り合い第一号になどと言うことは口走らず、あえて慎重に言葉を選んだ。
「貴族か何かの娘なのか?神殿に住むなんて・・・」
「あれは修道院ですよ。わたくしは・・・貴族の延長線の娘・・・です」
なぞめいた言葉を発した彼女は、少し寂しそうに笑い、それから思いついたように口を開いた。
「あ、あの!もしよろしければわたくしと—」
「—フランチェスカ様!」
すると突然鋭い声が響き、彼女の言葉をかき消した。
ロリコンと幼女の出会い
良く考えたら今日日曜日で学校は明日からだったw