複雑・ファジー小説
- Re: さぁ 正義はどっち ? 参照2000ありがとう御座います! ( No.282 )
- 日時: 2013/09/02 18:38
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: V8vi7l6T)
参照二千記念 番外編024 傭兵の黒と従者の白
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神殿の入り口には黒い法衣に身を包んだ修道女たちや、彼女の引越しを引導してきた輩が、蟻が巣穴から出てくるようにワラワラと群がってきた。
中には剣を構えているものもおり、その殺気を感じてかロバが興奮したようにいななく。
どうどうと落ち着かせようとするが、剣を持った輩や修道女が張り詰めた顔でこちらに向かってくるので、ロバはジョレスを引きずりながら後退し、ついにその手から逃れて走り出した。
「あ、こらまてロバ!」
「あ、待ってください—せめてお名前を!」
脱兎の如く逃げ去るロバを追いかけていくジョレスに、背後からフランチェスカが声をかけるが、修道士達の声にかき消される。
「フランチェスカ様、王位継承権第二位という御身の立場をお考えください!」
「ですが・・・わたくしは・・・」
同年代ほどの知り合いが欲しかったフランチェスカはまごついたように、走り去るロバと少年の背中を見る。
「王位継承権を狙うものは少なくありません。すぐ修道院の中へ!」
熱心なその言葉に、フランチェスカは頷いて彼らと共に修道院へ戻っていった。
その後ロバを無事回収したジョレスは、名残惜しいもののゼルフとミレアに合流すべく、街へ帰った。
「やっと回収してきたか。こっちはすべて終わったぞ」
城門の前では6人の盗賊が完璧に気絶し、そいつらの脇に座り込んだゼルフと、荷車に座るミレアがすでに待機していた。
「遅かったわね、何かあったの?」
ミレアが腕組みしながらたずねると、ジョレスが荷車に馬車をくくりつけながら、惚けた様に口を開く。
「天使に会ったんだ・・・」
「天使?・・・さてはあんた小さい女の子に遭遇したんだ?」
まったくもうと言いたげにミレアが腕を組みため息をつくと、ゼルフが首をめぐらせて彼らの背後を見つめた。
ミレアとジョレスが釣られて背後を見ると、ラルスが精悍な騎士をつれてやってくる光景が見えた。
ラルスの師匠に話を通してもらい、国王と面会した彼らは名誉の称号をもらい、国王からじきじきに礼を尽くしてもらった。
このまま我国で傭兵として暮らさないかと持ちかけられ、三人はそろって目を合わせる。
白い大理石でかたどられ、柱やシャンデリア、窓の飾りなどにふんだんに金が装飾される謁見の間に敷かれた赤い絨毯に跪く三人は、少しだけ時間をくださいと告げて頭をたれた。
国王はシワのある顔を柔和そうにゆがめて笑うと、玉座から頷いた。
「よかろう、そなたらの働きを私は気に入った。王城の客間にそなたらを招待しよう。もう下がってよいぞ」
国王に深くお辞儀をした後、三人は王城の客間に通され、その豪華さに目を見張っていた。
贅の限りを尽くした・・・という成金趣味の部屋ではなく、その一部屋丸ごとが芸術品のような優雅さにあふれていた。
その部屋のソファに腰掛けたゼルフは、すぐに本題を切り出した。ゼルフはこれと言って豪華な品物に興味がないらしく、しり込みせずにどうどうとソファに腰掛けている。
「お前たちは国王の申し出を受けるのか?」
「お前たちはって・・・じゃあゼルフは受けないの?どうして?」
大理石の飾り棚に乗っていた小瓶をしげしげと眺めていたミレアは、ゼルフの言葉に眉を寄せた。
「俺はラルスとか言う見習い騎士と戦いたい。練習ではなくて、戦地で直接剣を交えてみたい。だから、王国の・・・ラルスの味方にはつかない」
ソファに片肘を突きながらつぶやいたゼルフに、ミレアは困ったように腰に手を当てる。
「ほんっと、戦うことしか考えてないんだから!」
やれやれと天を仰いだミレアは、これからのことについて真剣に悩み頭を抱えた。
両親を失って絶望のふちにいたミレアを奮い立たせ、共に戦おうとした二人の仲間と離れるのはイヤだ。
国王の申し出は目が飛び出るほど嬉しいものだったが、仲間と別れてもいいほどのものではない。
ま、しょうがない、と心を決めたミレアはまさか、仲間同士がばらばらに別れ行く結末を迎えるとことを、まだ知らない。
思ったより長編だー
だけど次で終わりですねー