複雑・ファジー小説

Re: さぁ 正義はどっち ? 参照2000ありがとう御座います! ( No.283 )
日時: 2013/09/02 20:16
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: V8vi7l6T)

参照二千記念 番外編025 傭兵の黒と従者の白
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コンコンコン、と三連のノックが不意に聞こえ、扉が開けられる。
扉から顔をのぞかせたのは、干し草色の髪の少年。ラルスだ。
「何か用か?」
ラルスの顔を見ると、ゼルフがぶっきらぼうに言い捨てる。その指は、黒剣の柄をゆっくりと撫でており、今にも戦いたそうだ。
「用って程ではないんだけど、ちょっとね」
ゼルフに出鼻をくじかれ呑気に遊びに来ただけ、とはいえなかったらしく、ラルスが居心地悪そうに客間に足を踏み入れた。
 まぁ座ったら?と順応性の早いミレアが椅子のひとつを指し示し、くつろいだように肘掛け椅子にもたれかかる。
「なんかみんなすごく順応性高いね」
豪華な部屋の装飾を壊さないようにゆっくりと座り込むラルスが苦笑いしながら言うと、ジョレスがその話題には興味なさそうに首を傾げて口を開く。
「それで、どうかしたのか?」
たいしたことじゃないけど、とジョレスが適当に注いだ紅茶を啜りつつ、言うラルス。
「国王に面会してもらったけど、残念ながらフランチェスカ王女とは会えなかったね。俺達がついたころには修道院へ住み込んだ後だったらしいよ」
突然けたたましい、食器の砕け散る音が部屋中に響いた。ジョレスがティーポットを落としたのだ。
「おい、どうした」
あぁ王室の大事な家財道具が!とミレアとラルスが慌てて割れたガラス片を拾う中、微動だにしないジョレスを見て、ゼルフが不審そうに声をかける。
だがゼルフの声にはこたえず、ジョレスは目を見開いたままラルスに詰め寄った。
まだガラス片が散らばる中に飛び込み、しゃがみこむラルスにたずねる。
「フランチェスカって子、青い髪飾りをしていたか?白いスカート着て、ずっと丁寧語ばっかり話して、真っ白の遺跡みたいな神殿に住んでいて・・・」
「なんだ、修道院に行ってフランチェスカ様に会ったのか?」
掴みかからんばかりに質問攻めにされたラルスはジョレスの言葉のどれをとっても、イコール王女なので、不思議そうに首を傾げる。
衝撃を受けたように目を見開いて再び硬直したジョレスをおしのけ、ラルスはガラスの破片を回収すると、三人を見回して訪ねた。
「みんなは、国王様の申し出を受けるのか?」

「本当は・・・それをたずねに来たんだろ?」
ソファに身をゆだねていたゼルフがつぶやき、残念ながら、と首を振る。途端にラルスの顔が曇るが、ゼルフは顔色ひとつ変えず淡々と続けていく。
「国王の申し出はありがたいが、俺はお前と戦いたい。俺は強い奴と戦う必要があるから、お前のいる国に加担はしない」
「そうか・・・」
俺はまだまだ未熟者だけどな、と笑うラルスは、ゼルフの答えは薄々わかっていた様だった。
「私も、帝国の力になれる傭兵になりたいから、国王には悪いけど断ることにしたわ」
「ミレアもか」
ミレアのきっぱりとした答えに、ラルスは残念そうに頭をかいた。
この二人が国王の申し出を受けないとなると、その弟分のジョレスの答えも容易に想像できてしまう。
「俺は、国王の申し出を受けることにする・・・」
だが、ジョレスは緑色の瞳をラルスにむけ、予想外な答えをつぶやいた。
 どうして、なんで、と雨霰の様に降る言葉に、ジョレスはたった一言、どうしても守りたい人がいる、と答えた。
その人が戦争に負けて悲しむ姿は見たくないと、断固として言い張り、翌日を迎えた。
 そして翌日ミレアとゼルフは二人帝国へと帰り、ジョレスは王国へ留まり、王国の傭兵となった。
 その後帝国へと帰ったジョレスとミレアは共に名声を上げ、ゼルフは帝国の黒騎士になり、ミレアは帝国の皇女の護衛となった。
両国へ分裂してしまった傭兵中間達が次に再開するときは戦地であり、お互いの安否も風の便りだけが頼りだった。




過去の遭遇編おわり
戦闘シーン書けて楽しかったです!

ちなみに、この二年後にジョレスさんとフランチェスカ再会してますが、フランチェスカはジョレスのことを記憶の人と同一人物だと言うことに気付いておりません
ただ、二年前に出合った”平和そうな誰かさん”として覚えています

お粗末さまでした!