複雑・ファジー小説

さぁ 正義はどっち ? 参照2000ありがとう御座います! ( No.292 )
日時: 2014/12/24 20:55
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)

034 カメルリング王国ルート



雷の轟音のような歓声が終わると、国王は厳しい顔を一変させた。玉座にゆっくりと身をうずめると、その海のように深い瞳が一心にルークを貫いた。
あぁ、あの瞳を王女も受け継いたんだなぁ、と誰もが思うほどひときわ目立つその目に射抜かれて、ルークは身体が強張る感覚を全身に感じた。
国王はルークから目をそらさず、その長く蓄えられたひげに覆われる口を開いた。
「—冷戦の破約と共に、もう一報知らせるべきことがある。我が国についに二人目の魔導剣士が誕生した。その者の叙任式を今から執り行うことにする」
皆もろもろに情報をつかんでいるようで、視線だけで会話している。ルークを物珍しそうに眺めるものも居れば、情報を得ずに驚いて国王を眺めているものも居る。
その沈黙の喧騒の中に、国王の声音でルークの名前が告げられる。
「ルーク・ブランドリスよ、魔道部隊団長と共に前へ」
魔道部隊団長って誰、叙任式って何、とパニくるルークの肩にぽんと片手を乗せてユニートがつぶやく。
「僕についておいで」
まさかあなたが団長なんですか?といいかけた口を慌てて閉じ、ルークはとりあえず国王に無礼がないようにそそくさと移動する。
 国王の前に並んでひれ伏すと、国王は席を立たないまま二人を見下ろしていた。
代わりに国王の娘、フランチェスカが彼女の愛剣フランベルジュを手にして立っていた。
その剣でどうするつもりなんだろう、とルークが眉をひそめていると心の中で泡がはじけたみたいに、黒い疑惑が浮かび上がる。
—それで僕を斬り殺すつもりなのか?
いつかの黒剣に剣の鞘で殴られそうになったとき、ルークの中で黒々しい物が吹き上がったときと同じ感覚に、ルークは真っ青になる。
怒りとも狂いとも取れるあのときの衝動で人を刺した事が蘇り、慌てて深呼吸する。
(王女が僕を斬り殺すわけないだろ・・・何考えてんだ僕は・・・)
はっとして我に帰ると、国王が口を開いて何かを喋っていた。
「本来ならば王位継承権第一位の我が息子、フランキールに主従関係を結ばせるところだが—」
そう言って視線を王妃の隣で起立している青年に目を向けたので、彼がフランキールという次期国王なのだろう。フランチェスカ王女が可憐な王女なら、その兄であるフランキールも彼女の兄と納得できる顔立ちをしていた。
「—帝国に狙われた我が娘フランチェスカと主従関係を結び、必ずや報復を果たす為・・・そしてフランチェスカが魔術師であり魔道剣士であるからだろう」
その言葉が終わらないうちに、フランベルジュを手にしたフランチェスカが動いた。
彼女が動きを見せると、国王は咎めることなくすぐに口を閉じた。
電光がはぜるフランベルジュを刃を天に向けて掲げたフランチェスカは、その国王譲りの深い目をルークに向けて口を開いた。

「この上なく聖なる主、全能の父よ・・・あなたは邪まな者の悪意を砕き正義を守るために剣を使うのを、我々にお許しになりました・・・どうか貴方の前にいるこの下僕の心を善に向けさせ、この剣であろうと他の剣であろうと、不正に他人を傷つけるためには決して使わせないようになさって下さい。この下僕に、常に正義と善を守るために剣を抜かせて下さい」
そう祈るように天に向かってつぶやくフランチェスカは、剣を刃先をルークに突きつけるように持ち代えると、ルークの両の肩に刃を乗せ、主従の戒めを説いた。
「汝の身は我の下に、我が命運は汝の剣に!聖剣のよるべに従い、この意、この理に従うのなら、ならばこの命運、汝が剣に預けよう……」
優雅な所作で左右、そして頭上にそっと触れたフランベルジュは始終パチパチと音を立てていたが、フランチェスカの戒めの言葉の間は音が止むように小さくなった。
「はい」何を言えば良いかわからなかったルークだったが、自然と言葉が口から漏れ出し、王女に傅く。
「我に従い、よるべに従い、傅くとあらば、汝の総てを以てして我に仕えよ。此れを以て汝を叙任し我が騎士とする」
 フランチェスカの言葉が終わると、沢山の拍手が聞こえ、ルークは顔を上げた。
自分が騎士になったことがまだ信じられず、黒い目を見開いていると、
「ルーク・ブランドリス卿—か。悪くないんじゃないの?」
隣で跪いているユニートが軽く微笑んで笑った。



はりきって長い奴かいてたらこな時間帯に・・・

今回はルークの念願の騎士叙任式でした
フランチェスカの主従の戒め「汝の身は我の下に〜汝が剣に預けよう」はどこかで聞いたことがある人もいるかもしれないかもしれない。世界史の教科書にry
 難しい漢字使うと、なんか中二病っぽいな・・・