複雑・ファジー小説
- Re: さぁ 正義はどっち ? 参照2500ありがとう御座います! ( No.319 )
- 日時: 2013/09/28 13:52
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: DnkSJHRl)
037 カメルリング王国ルート
「ところで、キリエ牧師様とリグ僧侶様は一体どちらに居るのですか?」
カルマとルークの会話が一区切りすると、手元の本から顔を上げてフランチェスカ王女がカルマに尋ねる。
修道院襲撃事件の後遺症か、王女は彼ら二人が傍にいないと不安なようだった。
幸い死人は出なかったが負傷者が数人出たことが、王女の平和を愛する心をえぐったのだろう。
ルークがぼんやりとそんなことを考えていると、カルマが姿勢を正して王女に口を開いた。
「牧師殿と僧侶殿は、修道院跡地に行っております」
「そう、ですか・・・」
カルマの礼儀正しい言葉に、王女は目を伏せてなにやら考え込む。キリエ牧師とリグ僧侶にとって修道院は彼らの家のようなものだったろう。それが破壊されたのだから、家を焼かれるような痛みがあったに違いない。
ルークは修道院跡地が一体どうなってしまったのか、一度見ておきたかったが、キリエ牧師とリグ僧侶と一番身近にいた王女が彼らに会いに行こうとしないので、ルークも自重することにした。
「ところで、この客人は一体・・・?」
王女の答えの後、一拍おいてようやくカルマが不思議そうにルークの顔をじろりと眺めた。
普通初対面はこういう感じなのだが、カルマの場合アルビノ講義をしてからのこの流れらしい。
「僕はルーク・ブランドリスです。魔導剣士で—」
「ほぅ、魔導剣士?それは実に興味深い」
自己紹介を始めたルークの言葉をさえぎり、カルマが赤い瞳を輝かせた。
「私はカルマ・ファウストゥス。魔術師兼錬金術師兼学者なのだが・・・この王国に来るまで高名な魔術師を尋ねたり、遺跡を巡って魔術の書を復元する作業をしていたのだ」
あの棚に並ぶ大部分は私が書き施したものなのだよ、とカルマが嬉しそうに棚を指差す。良く見ればなんとなく、本の角がまだ四角い。古い書物は角が丸くなっていたり、石版の書物がいくつかあった。
「だが魔導剣士は人生にまだ二人しか会ってなくてね、ぜひ話を聞きたいものだ!」
そういえば僕も自己紹介してなかったよね、とカルマを軽く押しのけて、シランが握手してくる。
名前は話の流れから知っていたものの、ルークはまだシランが何者なのかはっきりしなかったのでありがたい申し出だった。
「シランっていうんだ、よろしく。ちなみにこの王国内でたった一人の幻術師なんだよ」
ぶんぶんと腕を振り回すような握手を受けていると、カルマが恨めしそうにシランのことを眺めてつぶやく。
「幻術師の事も知りたいと思っているのだが、コヤツは口が堅くてな。まだ書物に書き記せていない・・・」
「当たり前でしょ、幻術は才能が必要なんだよ。才能がなきゃ話したって理解できないだろうし、説明すること自体面倒くさいし」
そのつぶやきにしれっと笑顔で毒を吐くシラン。毒舌だがなぜか憎めないこの少年のベルトには、三つのマスコットがぶら下がっていた。
ひとつは若草色の髪の女の子、もうひとつは翡翠色の髪の少年、三つ目は包帯ぐるぐるのミイラ男。
それを凝視しているとあぁこれは、とシランが笑った。
「僕の大事な人たちだよ。・・・みんな元気にしてるかな〜?また、会えたらいいんだけどさ」
思い入れの強いものらしく、とても大事そうにマスコットを撫でると、それ以上は何も語らなかった。
やっと土曜日ー!