複雑・ファジー小説

Re: さぁ 正義はどっち ? 参照2500ありがとう御座います! ( No.325 )
日時: 2013/10/05 14:53
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: 8SVLQeDF)

039 カメルリング王国ルート



たった一つだけの答えを選んだキリエは、慈悲の剣ミセリコルデを再び布にくるむと、豆粒のように小さくなったリグ僧侶の後姿を追いかけた。
リグ僧侶はいつも持ち歩く黒いメイスを杖代わりにして瓦礫の中を進んでいたが、キリエの足音に気付いて口を開いた。
「もう王城の礼拝堂にお帰りですか」
「あそこには帰りません。あなたもそうですよね?」
かなり背の高いリグ僧侶と並んで歩くと、首を直角に曲げないと目を合わせて会話できないので、キリエはまっすぐ正面を向いて尋ねた。
「残念ながらその通りなんですよ。いつ死ぬかわからない道に進むのは不本意です。まぁでも、明日世界が滅びるかもしれないのでやるべきことはやっておきます」
 瓦礫を抜けて王城までやってくると、黒い服を着た修道士達が良く目立った。巨大な修道院の中にいた彼らの数は多く、三百人から四百人が王城に引き取られた。彼らは王城内にある修道院で祈り、また今までと同じように平和を願い続けるのだ。
鐘が鳴ると、そんな彼らは祈りのために礼拝堂へ集まっていく。だがキリエとリグは国王の居る謁見の間へと歩いて行った。
 
 謁見の間の黒い扉は閉まっており、二人の近衛兵がハルバートを持って待機していた。
近衛兵は二人の宗教関係者を見ると交差させるようにハルバートを降ろし、道をふさいだ。
「国王は現在面会謝絶であられる。出直してくるようお願いしたい」
「では・・・騎士団長でも、傭兵団長でもいいので、彼らの居場所を教えてくれませんか?」
その問いに近衛兵たちは顔を見合わせ、困ったように首を傾げた。
「白騎士の団長殿は現在国王と面会中であられるが、衛兵団長園はしばらく見ておりません・・・国王の面会にも衛兵の副団長殿が出席しておりますので・・・」
用命の団長が一週間消えたと知り、キリエは不安そうに腕を組んだ。
だがリグ僧侶は肩をすくめてまたあの人は、とつぶやき、近衛兵たちに背を向けて歩き出す。
慌ててお礼を言ったキリエは、リグ僧侶にその人と知り合いなのかと尋ねた。
「知り合いというよりは、異教徒仲間というべきでしょうかね?彼女は仏教徒の人間で、私と同じ異端の神を信仰しています」
「ブッキョウト?聞いたことありませんね?」
信仰が厚いため、他の宗教のことはまったく知らないキリエに、リグ僧侶は驚かないでくださいとつぶやいた。
「彼女の信仰する神は八百万もいるんです。しかも太陽とか白蛇とか狐とか狸だとか」
「なんですかそれ?!そんな宗教があるんですか?どうして動物なんかをあがめたりするんですか?」
キリエがビックリして声を上げると、迷惑そうにリグ僧侶は首を振る。
そんなこと私に聞くんじゃねぇ、というように肩をすくめた。
「そんなこと知りませんよ、私にも意味がわからない。とにかく彼女は王国と帝国の狭間にある樹海に行っていると考えられますね」
「動物をあがめにいったんですかね?」
頭の中で人が狸や狐に手を合わせておがんでいる様子を思い浮かべたキリエに、
「自然をあがめにいったんだと思いますよ、たぶん。彼女の神は自然総てなので・・・」
と、本当に八百万だったっけ?と思い出しながらリグ僧侶はつぶやいた。





八百万(やおよろず)の神って、あれ?八十八でしたっけ?