複雑・ファジー小説

Re: さぁ 正義はどっち ? 参照2500ありがとう御座います! ( No.326 )
日時: 2013/10/05 16:00
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: 8SVLQeDF)

040 カメルリング王国ルート



「何か変わった特徴は?!剣を使うとどうなる?!さっさと白状したまえよ」
「そんなこと言われても・・・」
ルークはカルマの赤い目に促されて、自分に何か変わった特徴があるかどうか眺めてみたが、対して取りとめもない。
特徴があるとすれば童顔ということだけだろうが、まったくもって魔道剣士であることと関係がない。
「っというか、これ剣というより果物ナイフなんですけど」
ベルトに挟まった果物ナイフもコレといって特徴のない、一般家庭にあるような木の柄の刃渡り15センチ程度のものだ。
だがその柄や刃に触れるだけで、紫色の電光が走る。
「おぉ」とその光景を見て目を輝かせたカルマは、机の上に広げた紙束に記録をとっていく。実験動物にでもされたような感じがして嫌な気分になる。
「今まで魔道剣士はフランチェスカ様だけだったから、まさか王女を実験動物にしたり観察媒体にすることはできなかったが、君のような一般市民ならば好きなだけ観察出来るのだよ!」と、どこかのマッドサイエンティストのように目を輝かせたカルマの押しの強さに負け、了承してしまった過去の自分に蹴りを入れたくなるがもう手遅れだった。
「何か呪詛を唱えてみたまえよ。『  』とか、『   』とか!」
カルマが呪詛を口にするが、その場で理解できたのは魔導師のユニート、魔術師兼魔道剣士のフランチェスカ、そしてカルマだけであり、魔力を持たないシランと呪詛を何も知らないルークはぽかんとしていた。
「あぁ、そういえば君は呪詛を何も知らないんだったね。観察は君の訓練と同時進行していくことにしよう」
残念そうに紙束をポケットに突っ込んだカルマは棚から本を取り出し、それをルークの前に積み上げた。
一冊の分厚さが手のひらを四つか五つ重ねた分ほどあり、かなり分厚い。それが五つくらい詰まれると、絶望的な気分になってくる。
「幸いにもカメルリング王国には攻撃属性の四属性を持つ魔術師魔導師が居る。炎はユニート、雷は王女様、風はリグレット僧侶殿、そして氷が私だ。幻術師も一人いる。かなり恵まれた環境であるといえる」
言いながら更に本棚から分厚い本を積み上げていくカルマ。試しに陽取る本を開けてみると、うねうねと動き回る文字が、ゆっくりと分解されていき、一つ一つ意味のある文字に変わった。
ページを撫でてみると、文字が水面をなぞるようにぐちゃぐちゃに混ざり合い、再び読めなくなった。
妙な本だ。一体どうやって書いたんだかわからない。
「まぁ経験はみんな積んでないが・・・かなり実践には弱いが、十分に戦力になると思う」
カルマの言葉に、ルークは本を覗くのをやめて辺りを見回した。
机の数は今この部屋に居る数よりも多い。
「魔術師と魔導師が、僕を入れてたったの五人ですか・・・?少ないですね」
いや、もっと居るんだよ今は居ないだけで、という言葉を期待していたが、カルマの答えは違った。
「四年前の大戦で、みんな死んでしまったからね」
「死んだ?」
「三十人から四十人はいたけど、みんな戦いで死んでしまったよ。もともと魔力を持って生まれてくる人間は少ないのに、戦争のために子供も老人も関係なくかき集めた結果皆戦死し、たったコレだけしか残らなかった」
かつてこの部屋には沢山の人たちがいて、今はいない。
なんだか不思議な感じがした。悲劇的な話であり、自分が彼らと同じ立場に立たされて一ヵ月後に死ぬかもしれないのに、実感がわかない。
「私はその当時旅をしていたし、ユニートもふらふらと旅をしていた。そのおかげで死なずに済んだ。あの戦争を切り抜けた王国の魔術師は、リグレット僧侶殿しか居ない」
死にたくなかったら、あの人のように強くなくちゃいけないと、カルマは自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
この場にいる王女を除いた魔術師魔導師は、一ヵ月後の戦争で死ぬかもしれないという死の予感を感じて、少し口を閉じた。