複雑・ファジー小説
- Re: さぁ 正義はどっち ? 参照2800ありがとう御座います! ( No.335 )
- 日時: 2013/10/19 15:24
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: AncojdKV)
039 ミカイロウィッチ帝国ルート
リンがいない。その真実を認めたエディとゼルフは手分けして場内を駆け回っていた。
灰白色の大理石にトルコ石で装飾の付けられた長い廊下を走っていたエディは必死に脳裏に浮かんだ考えを消そうとしていた。
ぽつんと残されたリンのマフィンの味を思い出すことで不安を消そうとするが、どうしても出来ない。
何の根拠もなく、ゼルフに話してみたが眉を寄せられただけの戯言に過ぎないが、どうしても頭から離れない。
リンは皇女の拉致癖によってさらわれたのではないか?
かつての自分のように、手駒が必要だったときに目の前に迷い込んだリンを丁度いいとばかりに笑みを浮かべて連れ去ったのではないか・・・。
息が切れてきたエディは廊下の真ん中で立ち止まり、かがんで呼吸を整えた。
疲れて冷静さを失っていたエディは、深呼吸するとだいぶ落ち着いた。そして自分が皇女に拉致されたとき、真っ先にあの拷問部屋の奥に連れて行かれたことを思い出し、そこへ走った。
エディと反対方向に廊下を進んでいたゼルフは同じように走る知り合いの後姿を見て思わず呼び止めた。
「ミレア」
名前を呼ぶと彼女はすぐに振り向き、足を止め、久しぶりにゼルフを見たというように少し驚いた顔をした。
現在ミレアはシェリル皇女の護衛をしているため、かなり皇女に振り回され暇がない。更にゼルフは黒騎士なため旧知の二人が会うことはほとんどなかった。
「どうしたの?例の件でゼルフも皇女様のところに行くの?」
「いや・・・」返事をした後で、ゼルフは例の件?と首を傾げる。先ほどエディにもしかしたら・・・といわれたことが蘇り、不安になる。
「シェリル皇女の部屋に刺客が侵入したらしくって」
「・・・・・・あぁ、それなら俺も行く」
今になってリンがしきりにポケットの中身を確認していたこと、リンがそこそこ戦えることが思い出され、心臓が早鐘を打った。
一時期少し噂になった盗賊の話があった。それは皇女の部屋に忍び込んだ盗賊が皇女の返り討ちになって死に、仲間の盗賊は行方不明になったというもの。
じゃあ早く行きましょ、と再び走り出したミレアの後を追ってゼルフも走った。
たどりついた現場は悲惨たるものだった。
廊下から天井までぴしりと取り付けてあった純白の壮麗な扉は、ばらばらに砕け散り、材木の破片が大小関係なく飛び散っている。
「シェリル様ー!」
その破片を踏みしめながら部屋の中を進むミレアには続かず、ゼルフは辺りに血などが飛び散っていないことを確認し、少し安堵する。
「まったく皇女様の護衛嫌いのせいでいつもこうなるんだから」
どうせ今回も刺客の行方は誰にもわからずじまい、皇女は好き勝手にムチを振り回し物品を破壊しまくる。
彼女にとって刺客との戦いは遊びに過ぎない。遊びを護衛に取られてはたまらないと彼女は護衛を無碍に遠ざけるので、ミレアは無駄な頼みばかりを押し付けられてあしらわれ、困っていた。
「・・・生きている刺客はどうなるんだ?」
ため息を付き捲るミレアに、ゼルフは尋ねた。
拷問だとか言われたら、皇女を殺す勢いで探そうとしていた。
「さぁ・・・どうなるかは誰にもわからない」
だがミレアは首を振り、あぁ片付けなきゃと木片を持ち上げ始めた。